繁盛店経営者に聞く

「同胞の食文化」味と質で追求


 在日本朝鮮人商工連合会(商工連)と同胞飲食業者協議会の主催による第4回目の「2000年度 朝鮮料理(焼肉)店経営集中講座」が、10月十七〜十八日(大阪)と11月14〜15日(東京)の2回にわたり催される。そこで、焼肉の需要が伸びる夏場を乗り切った3人の同胞焼肉店経営者に、その秘訣について語ってもらった。話を聞いたのは、3人中唯一の講座参加経験者である「コリヤンハウス・陽(ヤン)」(東京都江東区)社長の尹陽太さん(39)、そして「大津苑」(神奈川県横須賀市)店長の鄭然義さん(44)、「三味園」(千葉県松戸市)店長の左全aさん(49)。(構成・柳成根記者)

季節メニュー充実に力(尹氏)
和風味付けも積極的に(鄭氏)
「家族ゆったり」心掛け(左氏)

 ―3人の中で唯一、講座に参加した経験を持つ尹さん、実際に参加した感想はどうだったか。

  1回目からすべて参加したが、1流の講師の話を聞く貴重な機会だった。実際に繁盛店で試食して感想を言い合うなど、内容が実践的でハイレベルだ。

 印象に残ったのが、業界トップ・叙々苑の朴泰道社長による新メニュー研究講座。お客さんのし好をよく把握して常に新感覚のメニューを作ることや、従業員教育の徹底など、すぐに店で取り入れられるもので、当店でも帰ってきて即、行動に移した。季節メニュー(後述)もそうだ。
 また、全国の同胞経営者とも意見交換できたので大いに刺激になった。

 ―三店舗とも、猛暑の影響もあって、昨年同時期より客の入りは良かったそうだが、繁盛の秘訣は何か。

  コースメニューと季節メニューに力を入れた。頻繁に入れ替えて新鮮さを失わないようにした。

 焼肉は夏場に多く出るとはいえ、基本的に季節感のないジャンル。そこで、冷ややっこにヤンニョム(朝鮮風醤油ダレ)で味付けした「韓国ザル豆腐」や、朝鮮風サラダにのどごしの良いクラゲをあしらった「クラゲサラダ」のような、夏場に清涼感を感じさせるメニューを取り入れた。

 コースは「客単価3700円」という目安から、3000円からにした。「追加オーダーを一切せず食べられる」ことが売り。この金額内で肉、キムチ、サラダ、飲み物とすべて賄える。

  三重の松坂牛を一頭まるごと買い付けて自分でさばくので、肉の質はお墨付き。コスト削減で価格を抑えている。人気メニューは、3人前入る鍋を使った石焼ピビンパと、シャブシャブなどの和風料理だ。
 同胞の食文化は日本の風土で育った独自の食文化。発想を常に柔軟にし、ポン酢やおろしダレといった和風味付けでも、朝鮮料理に合うなら取り入れている。

  メニューそのものはオーソドックス。だからこそ、定番の人気メニューだからと気を抜かず、質を落とさず安心して食べてもらえるよう心掛けている。

 オリジナルメニューで人気なのは、明太子や納豆をトッピングしたピビンパと、スライスしたニンニクを入れてさっぱり仕上げた「ニンニクうどん」。日曜日には炒めモヤシを一皿サービスしている。来客が多く、注文した品が出るまで時間がかかるので、ビールのつまみを切らさないようにと考えたサービスだ。

 ―今後の抱負を一言。

  儲け主義が先行すると、価格に敏感な客は離れる。お客さんに正直であることをモットーに頑張りたい。都内に3店舗を土台に多店舗展開も考えている。

  今や焼肉店は(フランチャイズなどで)誰でも出せる時代。だからこそ手間を掛けて1つのメニューを作り込むことにこだわりたい。「店の味」が固まれば客はおのずと付いてくる。基本に忠実に、かつジャンルに囚われない新たな同胞食文化を提案したい。

  家族経営なので、味やサービスがマニュアル化した大型店のようにきめ細かいサービスはできないかもしれない。その分、家族経営ならではの家庭的な面をアピールし、素材と味でお客さんに還元したい。

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