京都エルファが同胞ヘルパー養成講座

地域密着の福祉活動へ

日本人専門家が講師、グループワークに実習も


 介護保険制度実施から5ヵ月が過ぎた。同胞社会でも様々な取組みが行われている。京都市では、同胞のための同胞ヘルパー養成講座が8月から毎週水曜日に開かれている。居宅サービス事業所のエルファが社会福祉法人くらしのハーモニーと共同で主催。12月までの講座と実習を修了すれば、2級ヘルパーの資格が取得できる。現在、30人ほどがヘルパー資格取得を目指して学んでいる。ある日の講座風景をのぞいた。

心教わる研修

 「みなさん、介護とはどういう意味でしょう。ノートに書いてみてください」

 9時に始まった午前の研修は「介護概論」。講師はヘルパーの派遣、福祉送迎サービスなどを行うNPO(特定非営利活動)法人ハーモニーきょうと事務局の河野通利氏だ。

 「では任さん、答えてみてください」。河野氏は参加者にも気軽に声をかけながら、雰囲気をなごませていく。

 「介護の介は人と人が寄り添っているように見えるでしょ。介護を受けるお年寄りや障害者と、あなた方介護の担い手はそういう関係にあると言えます」

 分かりやすい説明。参加者らもうなずきながら、懸命にノートにとる。8月2日の開講以来、この日を含め11の研修が行われた。

 開校式では、エルファの管理責任者、鄭禧淳さん(56、京都同胞生活相談所所長)が「在日朝鮮人高齢者の歴史と現状」と題して講演。その後は、日本人専門家、資格保持者らが講師として出演し、サービス提供の基本視点や職業倫理、リハビリテーション医療の基礎知識などを教えてきた。今後は、在宅介護の基礎知識や家事援助の方法、基本介護技術などを学んでいく。最後には同胞専門家が、「在日要介護高齢者の現状と課題」と題して講演する予定だ。

 「この年になるとやはり講義はむずかしい。毎回、家に帰って復習しています」と語るのは、63歳になる李仁順さんだ。

 「自分が年をとってきて介護について真剣に考えるようになった。四月から介護保険制度が導入されたことで興味も増した」と参加の動機を話す。「介護を受けるにしても知識を身につけていた方がよいと思ったし、健康な内に他人を介護することで人の役にも立ちたい」という。

 成佳香さん(28)は、「直接現場で仕事をしている方が講師なので、人間としてどのようなヘルパーであるべきかという心の部分を教えてもらえる」と語る。

絶対忘れない

 午後からの研修は「家事援助の方法」だ。キリスト教社会福祉専門学校(大阪府三島郡)福祉専攻科の大崎由良学科長が講師。

 家事援助の意義と目的、基本原則、職業人としての心得など、心がけねばならないことに関する講義の後は、4、5人を一組とするグループワークだ。

 この日のテーマは、高齢者夫妻の家庭、昼間独居の中途障害者の家庭という2つの事例を想定しての食事の献立作りである。@1日30品目を目安にするA食塩は1日10グラム以下とするB残存機能を生かすことを取り入れるC利用者主体であることを重視するD自立支援であることを常に考える――の5つが条件。30分の間にグループで話し合い献立を決めねばならない。

 「材料は全部使わなあかんのやろ」「そんなことない。1日30品目や」「蒸し鯛はどうやろ」「誕生日やからちらし寿司もええな」

 積極的に自分の意見を出し合う。その間に講師が場内を回る。質問は自由。こうして出来上がった献立を、各グループの代表が前に出て発表する。ひと通り発表し終わった後に、講師がコメントして終了だ。「講義の内容は忘れることはあっても、グループワークのことは絶対に忘れない」(大崎学科長)という。

 最後に衣類のたたみ方を教わり、この日の講義は終了した。時計は午後四時を回っていた。

父の介護のため

 「在日同胞社会で役に立ちたい」「苦労して今の在日社会を築いてきた一世に恩返ししたい」――講座に参加した動機は様々だ。中には親を介護する必要性から参加している人もいる。

 金珠江さん(49)姉妹もその1人。82歳になる父親を介護するためだ。

 「身内だとどうしても、感情が入りストレスがたまる。少しでも知識を持てばストレスのたまり方にも違いが出てくる。ここでは医学的な知識だけでなく、心のあり方も学べる」と話す。

 「1世の中には、迷惑かけたくないと介護を受けたがらない人も少なくない。そこをうまくコミュニケーションをとって、手助けしていければ。それは地域に密着してこそできること」と語るのは鄭順児さん(50)だ。最近、各地域でも同胞生活相談綜合センターが旗揚げしており、地域に密着した福祉活動を展開しようとしている。そこで最もポピュラーなのが高齢者問題だと言える。

 エルファ管理責任者の鄭さんはいう。
 「今、エルファに所属するヘルパーは10人ほど。ヘルパー資格者が多ければ多いほど、地域により密着した形で福祉活動を展開していける」(文聖姫記者)

 【エルファ】рO75・646・2804、рO75・646・2805

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