そこが知りたいQ&A
金永南委員長訪米妨害事件

Q米が謝罪、今後の展望は

A「テロ支援国規定」解除が焦点


 Q 朝鮮最高人民会議常任委員会の金永南委員長が、アメリカン航空の妨害によって国連ミレニアム・サミットへの参加を取り消したことに対し、オルブライト米国務長官が白南淳外相に遺憾の書簡を送ったというが、その内容は。

 A 具体的に伝えられたものはない。ただ、朝鮮外務省スポークスマンが朝鮮中央通信記者に明らかにしたところによると、今回の事件は米政府当局とは無関係で遺憾であるとのことだ。そして、朝鮮側の不満感を十分に理解し、今後、こうした事件が起きないよう保証するとした。

免れぬ責任、米当局の態度にかかる

 Q 朝鮮側は、この謝罪を受け入れたのか。

 A 一応、受け入れたことになるが、今後の米政府の行動を注視することにしたと述べている。いったん、謝罪を受け入れるが、米政府の今後の対応如何によっては再び対米強硬姿勢を取るということだ。

 Q 米政府の今後の対応というと。

 A 現在、朝米間では米国の朝鮮に対する「テロ支援国規定」解除の問題が話し合われている。これを指すと思われる。

 Q 米国の朝鮮に対する「テロ支援国規定」解除は、朝米間系において、どのような意味を持つのか。

 A 米国は朝鮮に対し、一貫して敵視政策をとってきた。その法的根拠となっているうちの1つが「敵国通商法」による経済制裁。これは昨年クリントン大統領が解除することを発表し、今年6月に施行された。
 そして、もう1つが「テロ支援国規定」による経済制裁で、今回の事件もこれに起因する。

 金正日総書記は、南朝鮮言論社代表団との会見で、米国が「テロ支援国規定」を解除すれば、すぐにでも国交樹立が可能だとの見解を明らかにした。つまり「テロ支援国規定」が解除されれば、もはや朝米関係改善に横たわる法的障害物が、基本的に無くなることになる。

 Q 米政府は当初、自分たちがまったく知らない状況で、民間航空社関係者が起こした不幸な出来事だ、と言っていたが。

 A まったく知らなかったというのは、ウソだろう。
 ドイツの日刊紙、フランクフルト・アルゲマイネ・チャイトンは七日、ドイツ外務省がアメリカン航空側に朝鮮代表団の地位と重要性について、事前に通報したと報じている。少なくともアメリカン航空側は金永南委員長一行の搭乗を事前に知っていたわけだ。

 また、金永南委員長一行は、検査に抗議して、この事実を米本国に伝えることを要求した。当然、金永南委員長が国家元首であることを伝えているだろうから、一行の地位を知らなかったとは言えない。

 それに米国は、「要注意国家」の外交官を常に監視しており、金永南委員長ほどの大物の動向を知らないはずがない。しかもクリントン大統領は、金永南委員長を米大統領主催の宴会に招待している。したがって、米政府が「知らなかった」と言っても通用しない。

 Q 金永南委員長との会談を望んでいた米国が、このような事件を起こす理由がない、といった論調も一部には見られるが。

 A ワシントンの情報に詳しい消息筋によると、朝米関係改善に反対する勢力が事件を起こした可能性があるという。

 周知のように現在、米国では大統領選挙の真っ最中で、朝鮮問題が焦点のひとつとなっている。

 とくに、米国が進めているNMD(米本土ミサイル防衛)配備計画では、民主、共和両候補の間で激しい論戦が繰り広げられており、NMD推進派は、朝鮮の「ミサイル開発」をその口実に挙げている。金永南委員長が訪米して、朝米の和解ムードが高まれば、それはNMD推進派にとって逆風になるというわけだ。

 また、今回の国連サミットでは、日本の森首相をはじめ、各国の首脳が金永南委員長との会見を望んでいた。朝鮮の外交的影響力、地位の高さを物語るものだが、これも米国にとっては面白くない。米国は、朝鮮半島の和解は、あくまでも米国のイニシアチブのもとに進めるべきだという基本姿勢を崩していないからだ。

 いずれにしても、米国には金永南委員長の国連ミレニアム・サミット参加を妨害する十分な動機がある。

 Q すると、米国の責任は免れないということか。

 A その通りだ。故意にしろ、朝米関係改善に反対する勢力の策動にしろ、民間航空社の落ち度にしろ、米政府の責任は免れない。

 かつてパレスチナ解放機構(PLO)のアラファト議長が、国連総会に出席しようとして、米国に入国ビザの発給を拒否されたことがあった。その時、米国は国際的な非難を受けた。

 国連加盟国には国連総会に参加する権利があり、国連本部をニューヨークに置いている米国は、それを保障しなければならない。

 百歩譲って、米政府の関与しない民間航空社の起こした事件だとしても、朝鮮を「ならず者国家」と規定しているのは米政府で、「ならず者国家」に対しては厳しいチェックを行うよう指導しているのもそうだ。

 Q オルブライト国務長官の謝罪で、今後の朝米関係はどうなるのか。

 A 全面的に米国の態度にかかっていると言えよう。米政府がなんらかの誠意を見せれば、雨降って地固まるではないが、朝米関係改善は進むだろうし、そうでなければ当分、関係が冷え込むだろう。

今後の行動を見守る/米の謝罪で外務省談話

 朝鮮外務省スポークスマンは9日、米国がさる4日にフランクフルトで、国連ミレニアムサミット出席のためニューヨークへ向かっていた最高人民会議常任委員会委員長一行に対して取った挑発行動について、公式に謝罪の意を表明したことと関連し、要旨次のような談話を発表した。

 1、われわれは自主権を命のように重んじる国だ。われわれは自尊心を曲げてまで会議に行けなかったし、それがもたらす結果については米国が全面的に責任を負うべきだと断固として警告した。

 1、われわれの対応措置は国際社会の広範な理解と共感を呼び起こし、米国の正常ならざる行為は当然の非難を浴びた。一方、米国当局者たちはこぞって空港での事件が米政府当局の立場とは無関係だとしながら、遺憾だの謝罪だのと、われわれの理解を求めた。

 1、米国務長官は、米国政府が今回の事件について深い憂慮を表明すると共に、今回の事件によるわが方の不満感を十分に理解し、今後再びこうした事件が起こらないよう保証するという内容の手紙を送ってきた。

 1、われわれは米国側が今回の事件と関連して公式に謝罪したことに注目している。われわれは、米国側が事件の責任を感じて謝罪してきたことについて留意し、今後、米国の実際の行動を見守ることにした。(朝鮮通信)

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