不況下で利用者増加 中小企業向け「制度融資」

同胞も積極的に活用を

利息安定、種類も多彩


 長引く不況で、企業経営に必要な資金を金融機関から調達するのが難しいことから、中小企業資金融資制度(制度融資)を活用する企業が増えている。一定の条件下で、国や都道府県、市区町村などから資金を借り入れることができる制度で、同胞商工人にも、ここから設備投資などに必要な資金を得ている人は少なくない。その種類と内容、メリットを見た。

設備投資に利用した「一力物産」/地域商工会とよく相談して

国、自治体が貸出

 制度融資とは、国や都道府県、市区町村などが中小企業に対し、設備資金や運転資金、創業・転業資金を公的資金から貸し出す制度である。設備資金とは店舗の新築、改装、機械や車両の購入など設備投資全般に必要な資金、運転資金は事業に必要な商品・材料の仕入れ、従業員の人件費などを指す。

 制度融資には主に、国が貸し出す国民生活金融公庫、各都道府県・市区町村単位の融資制度などがある。それぞれ、融資条件と融資額、返済期間、利率などが異なり(別表参照)、また各都道府県で異なる名称や基準を採用しているケースが多い。

 国民生活金融公庫は、ほぼすべての業種で利用できる制度。もちろん同胞も例外でなく、申請書類が揃えば融資を受けられる。ただし、金融業、パチンコ業、税金未払者は不可となる。最大融資額1億2000万円の普通貸付と、同1000万円の経営改善貸付がある。

 一方、自治体単位の制度の場合は、各地域によって名称や区分が異なる。

 東京都の場合、信用保証協会の保証付融資制度として、技術・事業革新等支援資金融資、創業支援融資、小規模資金融資、経営安定支援資金融資、設備資金貸付などに細分化される。また、千葉県のように国民生活金融公庫を窓口にして、飲食店や食肉販売などを対象にした環境衛生貸付を独自に行うところもある。

 いずれも、各地域の朝鮮商工会に問い合わせて、具体的な内容を確認することが必要だ。

 制度融資の特徴は、公的資金からの融資のため財源が安定している点にある。

 また、利息が固定金利制で、平均1〜2%台と安く、返済期間も最大15年と余裕がある。業種に応じて様々な制度があり、企業側にとって選択の幅が広いのもメリットだ。

 一方で、手続きの都合上、資金が下りるまでに1ヵ月ほど掛かってしまうことが難点だ。

返済延滞は厳禁

 トックや冷麺、キムチなど朝鮮食品の製造販売業を営む「一力物産」も、実際に、制度融資を活用して設備投資に充てている同胞企業の1つだ。同社が利用したのは国民生活金融公庫など。いくつかの制度融資を組み合わせて得た8000万円を元手に、現在、事務所を工場に改築中で、11月に完工予定だという。

 制度融資を選んだのは、景気の低迷で金融機関からの借り入れが厳しいなか、「金利が安いので、比較的使いやすいと感じた」(金一圭代表)こと。同社では茨城県に自社工場を持っているが、事業拡大に向けて、新たに事務所を工場に改築し、2工場体制で生産に入ることを決めたという。

 現状では金融機関からの借り入れは難しいと判断、制度融資を利用することにした。所得データと確定申告の書類、帳簿など書類を一通り揃え、スムーズに融資を受けられたという。

 金さんは、制度融資を受ける際のアドバイスとして、「普段からきちんと書類を揃えて、いざ借り入れる時に備えたうえで、地域の商工会とよく相談して決めることが必要だ」と語る。当たり前のことだが、書類の不備で融資を受けられない人も少なくないという。

 また、新規で借りる人については「書類とともに、自分が融資を必要とする理由、事業拡大への意思と展望など、自分の『思い』を一筆添えることも有効でしょう」とも語る。返済を延滞すると、5年間借入禁止のペナルティを課せられる。(柳成根記者)

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