ことわざ辞典

孝心の限りを尽くせば、石の上に草が生える


 「孝心の限りを尽くせば、石の上に草が生える( ヒョソンイ チグッカミョン トォウエ プリ ナンダ)」

 親孝行の限りを尽くすと、奇跡的な天の助けもあるとの意。

 その昔、オモニと息子、娘の3人は、慶州郡のある草ぶきの掘立小屋に住み、わずかな焼き畑で生活をしのいでいた。やがて2人とも1人前に成長し、オモニは息子に嫁をもらって家を継がせ、娘はよそへとつがせた。

 「さあ! これから楽をさせてもらえる。名勝地なども見物するぞ」と、夢見ていたオモニであったが、これまでの積もりに積もった疲れが1度にふきでたせいか突然、重病をわずらい、子供たちのあたたかい心遣いも空しく、涙を呑んで死んでいった。

 冥府につくと、オモニはさっそく閻魔大王に呼びだされて、「そなたは現世にいるとき、寺参りしたことがあるか? またどんな所を見物したのか?」と聞かれた。

 オモニが苦渋に満ちた表情で「貧しかったので、とても寺参りや名勝地の見物などをする余裕はありませんでした」と語ると、閻魔大王はしばらくしてこう言った。「じゃ、そなたは家の留守番が何よりの楽しみだったのだな! では、そなたは犬となって息子の家に帰り、泥棒の番でもするがよい」。と、同時にオモニは犬と化した。

 ある日、息子の飼い犬が仔を生んだ。まさにその仔がオモニの化身であった。仔はぐんぐん大きくなり、やがて大きな犬となった。それで息子夫婦はある日、その犬を殺して喰おうじゃないかとひそひそ話しあった。 そして、息子が犬を捕らえようとした時、さっきまでいた犬が急にいなくなった。怖くなった犬は走りだし隣村に住んでいた娘の家に逃げこんでいたのだ。

 それを聞き驚いていた息子の前に、僧が現れこう言うのだった。「実を言うとその犬はあなたのオモニの亡霊である。生前、オモニの夢は家の留守番をしながら、寺参りや名勝地の見物をすることであった。それなのにあなたがたは犬を殺そうとした。この不孝者め!」。

 すると、息子は「あっ!」と叫びながら妹の家へ向かい、犬に涙ながらに許しを乞うた。そして犬をおぶって朝鮮八道の寺や名勝地を見物させた。だが家路につく頃、犬は突然倒れ、死んでしまった。犬を手厚く葬った息子夫婦は、やがて大富者となり、子孫代々まで栄えた、という。

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