健康にいいって本当?

ミネラルウォーターを探る

水源は特定されている

ミネラル補完の働き、身体の酸素にも


サントリーが販売する「南アルプスの天然水」は
ミネラルウォーターのトップブランド(サントリー提供)


効能はコメントしにくい

薬とは違う≠ニ専門家

 「水と安全はタダ」と言われたのは昔のこと。今や水道水はまったく信用できない。家庭では浄水器をつけるのがなかば常識となっており、ミネラルウォーターの普及率は急速に伸びている。昨年、総市場は過去最高の103万2000キロリットルに達した。そんな状況を反映してか、「ミネラルウォーター、自然水などの成分、質、効用などについて知らせてほしい」との投書が読者から寄せられることも少なくない。ミネラルウォーターについて探った。

自然志向とマッチ

 「今は天然・自然・健康志向とグルメ志向がトレンド」

 日本ミネラルウォーター協会(以下、協会)の技術顧問、福士祐次氏はこう分析する。そして、これらは「健康・安全性・おいしさといったミネラルウォーターの商品の機能そのものだ」と語る。

 サントリーが20〜49歳の成人男女500人を対象に、4月に行った調査でも、71.0%が「安全性」をイメージとして挙げた。

 飲む理由としては、「おいしいから」が68.0%と最高だったが、「自然・天然の水だから」(35.0%)、「健康にいいから」(27.0%)というのも上位を占めた。

 消費者が健康・自然・安全志向からミネラルウォーターを購入しようとしていることが、ここからもうかがえる。

 安全性の追求は、裏を返せば水道水が信用できないということだ。協会が発行する「ミネラルウォーター読本Q&A」も、「地方の水道水にはまだ良い水が多々あるが、首都圏、関西圏などの都市部では、ビル、マンションなどの末端システムに問題が発生して、水道水に対する不満、不安が消費者に出て来ている」と指摘。これがミネラルウォーター購入のひとつの要因だと分析する。

 水源が特定されているのだから、安全性の面では心配しなくてもよいだろう。

朝鮮産は長寿に効く?

 もう1つの焦点である「健康」はどうか。

 (1) 中身の安全が確保されている (2) 多種微量のミネラルが身体の酵素系にかかわっている (3) ミネラル分が欠如した時、補完する働きがある(ビタミン剤などの保健薬と同じ役割)――などの理由から、健康に良いことは間違いない。

 「だが、何かに効く、効かないとなると、薬ではないのでコメントしにくい」と福士氏はいう。薬として認められるためには、臨床実験を経て様々なデータを集めなければならない。したがって、「どの種類が何に効く」といった説明はできないそうだ。

 逆にヨーロッパでは、薬効がなければミネラルウォーターと認められない。日本でもファンの多いフランス産のボルヴィックがミネラルウォーターとして認められたのは、ここ最近のことだという。利尿作用が薬効として認められたためだ。フランス産のコントレックスは、ダイエットに効果的だと宣伝されている。

 ちなみに、日本には朝鮮産のミネラルウォーターも輸入されている。昨年実績は1万6200リットル。今年は1〜5月で5万400リットルとなっており、徐々にだが売上げを伸ばしている。そのひとつ、「金剛山の泉」(有限会社ミロク)は、「健康と長寿に最適」とその効能をうたっている。

おいしさは成分から

 では、おいしいミネラルウォーターとは。

 協会発行の「Q&A」によると、ミネラルウォーターのおいしさは、特定の成分の多さ、少なさではなく、多種微量のミネラル成分のバランスによって決まるとされる。

 「おいしさに寄与する成分」と「まずさに寄与する成分」があり、そのバランスが大切だということだ。

 「おいしさ…」の成分は、カルシウム、カリウム、二酸化ケイ素、重炭酸などで、これらを適量含有していることが求められる。「まずさ…」の方は、マグネシウム、硫酸イオン、硫化水素、マンガン、鉄、銅、亜鉛などが挙げられる。

 これら成分間の相乗作用の問題もある。例えば、マグネシウムは渋みに関係する成分だが、カルシウムなどとある割合で共存すると、逆においしくなる場合もある。

 ミネラルの量は多すぎても、少なすぎてもだめ。ミネラルをまったく、もしくはほとんど含まない物は「気の抜けた水」になる。バランスにもよるが、適量のものは「まろやか」、多すぎると「苦み」「塩味」「渋み」などが出てしまう。

 飲む際の適温は10〜15℃(夏場は10〜20℃)。こうしたことを参考に、ミネラルウォーターを購入する際には成分表を十分に確かめるとよい。(文聖姫記者)

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 日本ミネラルウォーター協会 「会員相互の協調のもとに製品の普及促進、情報知識の交換を図ることにより、製品の品質向上を期すること」を目的に、1972年5月に設立された。会員数は5月現在で103社。正会員の中には、サントリー、アサヒ飲料など大手が名を連ねる。正会員61社で、国産のミネラルウォーターの全生産量の約62%を生産している。ミネラルウォーターについて、様々な角度から親切に対応してくれる。(TEL 03・3350・9100  FAX 03・3350・7960)

ミネラルウォーターとは?

地下水を容器に詰めたもの/日本では4つに分類

 またの名を容器入り飲用水。流れている地下水や滞留している地下水を汲み上げたり、湧き出している地下水を容器に詰めたものをいう。

 日本の地形はそのほとんどが傾斜が急で険しい山地で形成されている。そのため、雨や雪の大部分は地表を一挙に下って海に流れ込んでしまう。だが、その一部は樹木の表面を濡らし、木の葉に溜まって徐々に蒸散する。また一部は地中深くしみ込む。

 これらが長い年月をかけて砂や砂れきの層を幾重にも潜り抜け、粘土層や固い岩盤などにぶつかって滞留し、その層の上を流れて行く。

 その間、何層もの地層が自然のフィルターとなり、水がろ過されるとともに、一方では、地層を移動中、または滞留している間に、土壌の中の多種微量のミネラル成分を溶かし込んでいく。こうやって地下水が作られる。それを容器に詰めるとミネラルウォーター商品となる。

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 ミネラルウォーターは気候、気象、地質、地形など自然の条件に深く関わっており、世界各国、各地域によっても考え方に差がある。

 日本では、農林水産省が1990年3月30日に制定した「ミネラルウォーター類の品質表示ガイドライン」に基づき、製造者の指導を行っている。

 それによると、ミネラルウォーター類はナチュラルウォーター、ナチュラルミネラルウォーター、ミネラルウォーター、ボトルドウォーターの四つに分類される。

 ナチュラルウォーターとは、特定水源より採水された地下水を容器に詰めたもの。後の3つはこの地下水のうち、地下を移動中、または地下で滞留中に地層中の無機塩類を溶解したものをいう。ただし、後の3つは、殺菌、ろ過などの処理方法がそれぞれ異なる。例えば、ナチュラルミネラルウォーターと呼ばれるものは、ろ過、沈殿、加熱殺菌以外の物理的、化学的処理を行ってはならない。

 原水が地下水以外の水道水、蒸留水などはボトルドウォーターに分類される。

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