未来商社


 貿易業とは複数の国をまたにかけた商品流通であり、需要を持つ者と供給する者を見つけ、その売買を仲介する。

 文字、画像、音声などの様々な情報を世界中の人々と双方向でやりとりできるインターネットを活用すれば、既存の貿易商社を介さずとも、外国の売り手や買い手とダイレクトにコミットする機会が得られる。一般企業や個人でも、ある程度の条件が整えば貿易取引ができるが、そうなると貿易業の「縄張り」はどんどん侵され、商社という業種の存在が危うくなる。

 しかし、中にはこの「商売敵」をうまく利用する商社もある。

 化学製品を主に扱っている神戸のある「ベンチャー商社」は、すべての取り引きをインターネット上で行っている。同社はウェブ上でバーチャルマーケットを運営しており、関連業者は登録さえすればマーケットに参加できる。売り手は販売価格をそれぞれ提示し、買い手側は数多くの売り手の商品を物色する。

 このサイバーマーケットを介せば、いくら離れた国の業者でも、時間的、距離的な壁を越え、より多くの対象にコミットでき、より効率的でスピーディーにコミュニケーションできる。運営する商社は、取り引きが成立した場合にマージンを受け取る仕組みだ。

 日本の総合商社なども、最近では同様の動きをみせており、鉄鋼や石油製品、電子部品から自動車部品に至るまで、あらゆる分野での電子市場づくりに着手。「市場運営者」への変身を模索している。

 eコマースの世界的拡大は既存商社の機能や事業方法まで変えようとしている。これもグローバリゼーションの波のひとつと言えるだろう。(李達英=朝・日輸出入商社)

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