「改正JAS法」で何が変わった?
全食品に品質表示義務
すべての食品に品質表示を義務づけることや、有機食品の新たな表示制度などを盛り込んだ「改正JAS(日本農林規格)法」が、4月から施行された。食中毒や異物混入など食に関するトラブルが相次ぐなか、生産者にはいっそう厳しい品質管理が、また消費者には十分な品質判断が問われるようになった。改正されて約5ヵ月、そのポイントを見るとともに、同胞の食卓には欠かせないキムチを取り扱う同胞乾物店に話を聞いた。
生鮮食品には原産地明記「オーガニック」認証制に JAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)は、食品の安全を守る目的で、1950年に制定された。 この法に基づき、消費者が手に取って判断できるよう、統一規格に沿って品質を検査・格付し、生産者にも品質表示を義務づけるのが、JAS制度である。おなじみ「JASマーク」は、検査に合格した食品につけられるマークで、その食品の「信頼度」を示す。 今回の改正のポイントは、品質表示の充実化と、有機(オーガニック)食品検査認証制度である。 品質表示とは、生鮮食品の「名称と原産地名」、加工食品の「名称、原材料名、内容量、賞味期限、保存方法、製造業者名(輸入品は輸入業者名と原産国名)」を指す。 従来、表示対象品目は64品目、生鮮食品で原産地名の表示が必要なのは野菜九品目と定められていた。今回の改正では、全食品に表示義務が課せられ、生鮮食品もすべてに原産地名表示が必要になる。生鮮食品への適用は今年7月からで、加工食品にも来年4月から適用される。 これらの商品を業者が市場に出す際には、農林水産省が指定する第3者の団体・機関が検査したうえで、合格してJASマークをつける許可が必要になる。 一方、昨今ブームの有機食品の場合は、化学肥料や農薬を使わず、堆肥など動植物性肥料だけ使ったものだけが合格となる。 法的に「有機」を定義づける規格はこれまでなかったため、堆肥をほんの少し使っただけで堂々と有機を名乗る「怪しい」ケースも増えた。こうした現状を改めるため、今回の改正では国際食品規格(コーデックス)に準拠した規格を作り、第3者の認証機関が認めた生産者だけに「有機JASマーク」表示を認めることにした。 なお、無検査の商品を市場に出したり、許可なくJASマークを付けて販売するなど、JAS法に関する違反行為には、1年以下の懲役または百万円以下の罰金が課せられる。 東京・上野朝鮮乾物店「まるきん」 同胞の食生活と切っても切り離せないキムチ。改正JAS法の施行で、その品質表示はどうなるのか。 農林水産省品質課によると、キムチの場合、南朝鮮などからの輸入品については、原産国の業者に原産国と品質の表示が義務づけられる。それを輸入する日本の業者は、その表示を日本語で適切に表示しなければならない。一方、日本の業者の「手作りキムチ」の場合は、日本の業者が製造・加工・販売を行うので、その業者が原産地と品質を表示することとなる。 では、実際にキムチを扱う同胞業者は、今回の改正にどう対応しているのか。 焼肉店や朝鮮乾物店が軒を連ねる東京・上野の一角、創業40年以上の老舗の朝鮮乾物店「まるきん」(文公憲社長)。同店のメインは「手作りキムチ」。だ 日本産なので、上記の通り、JAS法の改正で厳しい品質管理と細かな表示が求められるが、文社長は、「表示の問題は今後、細心の注意を払うべき点。機械メーカーや印刷業者と相談し、表示シールの作成を準備していく考え」と語る。 また、品質管理への取り組みについては、「季節や天候などによって野菜の良し悪しがあるので、仕入れた野菜のチェックは怠りなく行っている。季節によって塩加減に気を遣うとともに、衛生面と温度管理にも神経を遣っています」。 キムチを通じた朝鮮の食文化の継承にこだわりを見せる文社長。製法を簡略化した、いわゆる「浅漬けキムチ」の普及で、キムチが一般消費者、とくに日本人に根付き、関心が高まるなか、本場の味、手作りの味への関心、ニーズも高まってくると見ている。 「そうした中で、朝鮮本来の古典的なキムチをどう守っていくかが大切。同胞にも日本人にも、最高の『朝鮮の味』を届けるのが、同胞乾物業者の使命と考えます」(柳成根記者) |