みんなの健康Q&A
夏バテ(下)/気をつけること
金秀樹
西新井医院副院長
豊富な食材で栄養補給/豚肉、レバー、枝豆、にんにく 水分のとり方に注意 Q ついつい面倒くさくて、入浴はシャワーですましてしまうことが多いのですが。 A 夏こそシャワーではなく浴槽につかって温まることが大切です。夏の入浴の主目的は、冷房で冷えた体を温め適度の発汗を促し、代謝をよくすることなので、ぬるめのお湯(40度以下)に短時間(15分以内)つかるという方法が推奨されています。入浴剤は、香りによる心理的効果以外は、あまり期待しない方がよいと思います。 Q 寝苦しい夜をどのようにして乗り切ればよいでしょうか。 A 冷房や扇風機をつけっぱなしにして眠ってしまうと、翌日だるさや筋肉痛を覚えるという方が少なくないと思われますが。 やはり空調機を作動させない自然の環境が最も体に良く、寝る場所は温かい空気がこもりにくい1階の和室がおすすめです。寝ても起きても同じ格好では神経が休まりませんので、眠る時はきちんとパジャマに着替えて下さい。パジャマは下半身の通気性が良いもので、素材は綿などがよいでしょう。 市販の冷却布(解熱用)を体の動脈の集中する所に貼るという方法も紹介されていますが、ちょっと危険なように思います。ともあれ、よい睡眠リズムを取り戻すには、早朝の光を浴び、花の香りを嗅ぐのが最も効果があります。光は人間の活動性をつかさどる交感神経を活性化し、さらに花の香りがその過程を円滑にし、無理なく脳と体を朝の状態にしてくれます。 Q 夏場は冷たい飲み物に手が行きがちですが、飲食についての注意点を話して下さい。 A まず強調しておかなければならないのは、暑い夏には汗などで大量の水分や塩分が体から失われるということです。比較的軽い場合でも、1日当たり水分が300ミリリットル、塩分2〜3グラムが失われています。全身汗びっしょりともなると、水分は1リットル以上、塩分は六〜10グラムも失われているのです。 当然、水分の補給が必須となりますが、どのような飲料水で水分を補うべきかが問題となります。喉のかわきをいやそうと、冷えた清涼飲料水などに手がのびてしまいがちですが、前にも言ったように、冷えたものを飲み過ぎるのはよくありません。飲んだ時はさっぱりするようですが、暑さで弱っている胃腸によけいな負担をかけてしまい、夏バテによる食欲不振をより悪化させます。 一方、清涼飲料水に含まれる過剰な糖分の処理にはビタミンB1が大量に消費され、その不足から疲れやすくなり、食欲が減退します。ビールはアルコール飲料ですから、後で必ず喉がかわいてきます。塩分そのものは、軽い発汗ならば日常的にはことさら補う必要はありません。 Q 食事はどんなものがよいでしょうか。 A 暑い時には、食事はさっぱりしたものに偏りがちです。しかし、それが続くと、タンパク質、ミネラル、ビタミンなどが不足してきます。何より大切なのは、がんばって朝食をしっかりとり、1日三食きちんと食べることです。このことが生活のリズムを作り出して、夏バテ予防につながります。 東洋医学では、夏は体を冷やす「涼性・寒性」の食べ物をうまく取り入れて、余分な熱を体内にためないよう心がけることを教えています。 その食材として、セロリ、レタス、茄子、トマト、きゅうりなどの野菜類、すいか、バナナ、キーウィ、レモンなどの果物、鮭、はまぐり、あさりなどがあります。野菜類はとくに生で食べると熱を取る効果が高まります。 ビタミンB1は夏にはとくに不足しやすい栄養素で、これが不足すると疲れやすくなり、食欲が減退します。そのため、豚肉、レバー、うなぎ、枝豆、豆腐、胚芽米、ごま、にんにくなどビタミンB1の豊富な食材を使うように心がけることが望まれます。 食欲増進にはハーブや香辛料を上手に使い、酢やレモンなどを利用するのもよいでしょう。日本ではおなじみのしそ、しょうが、みょうがはご飯にもよくなじみます。 そういえば、朝鮮人は「エゴマの葉」が大好きですが、これも食欲増進には効果的ですね。いずれにしても、食欲が出てくれば体力は自然に回復し、元気も出てくるというものです。 朝鮮に古くから伝わる言葉に「以熱治熱」というのがあります。暑い時には熱い料理で暑気ばらいをする、という意味です。ちなみに、最も暑い時期の定番料理は、サムゲ湯とポシン湯だそうです。 |