宋美子さんが９７年から毎年企画・実行している「生き生きこども交流会」は、今年で四回目を迎えた。日本人の画家らにボランティアで参加してもらい、同胞と日本のこどもたちが一緒に絵を描く楽しさを知ってもらおうというもの。口コミでうわさが広がり、他地域からの参加者や日本の小学校に通う同胞生徒の数も年々増えている。夏休みの宿題も片付くと、オモニたちも大喜びだ。

　９５年１１月に開いた「親子で作るクリスマスケーキ」教室も大好評だった。宋さんは、子供たちの誕生日などに、手作りケーキをプレゼントしりもしている。

　こうしたイベントを通してオモニ同士の交流も深まった。その子供同士の触れ合いや親同士の交流が、若い世代の地域同胞社会への参加につながっている。

　「堅苦しい説得よりは、同胞同士互いに触れ合い心を通わせることが大切」というのが宋さんの自論。そうすることで、同胞子弟が１人でも多く朝鮮学校へ入学してくれれば、と宋さんは考えているのだ。

　金正樹・総聯八幡支部委員長も、「穴生分会のこうした活動が、日本の学校に通う子供たちが朝鮮学校を知る入り口になり、若いオモニ同士が接触する契機にもなっている。この交流会を機に、少しでもウリハッキョに通う子が増えてくれたら」と語る。

分会をサークルの拠点に

　２世の宋さんは８年前、１世の分会長からバトンを受け取った。それまで女性同盟の分会では、冠婚葬祭や花見の準備など、総聯分会をバックアップしてきたが、独自の活動はあまり目立たなかった。そのせいか、若い世代の分会活動に関する関心も薄れがちだった。そこで宋さんは、もっと同胞のニーズに応える方法で分会活動を盛り立てていくことにした。

　まずは、９４年９月に開催した「ヘルシードーナツ作り」。講師は、料理教室でその腕を培った宋さん本人で、昼と夜の２回に分けて行った。同じことを同じ日に２回行うというのは、簡単なことではない。でもそうすることで、時間の関係で普段あまり分会に顔を出せなかったオモニたちも多く参加できた。

　「自分が参加したくなるようなものを、と考えついたのが『ドーナツ』。楽しくてためになるものだったら、誰でも参加したくなる」と、宋さん。

　できあがったドーナツは子供たちのおやつにと、北九州初中に贈った。オモニたちのだれもが「家でも簡単に作れる。ぜひ子供に食べさせたい」と満足していた。

子供たちから交流の輪広げ

　宋さんは、このドーナツ作りをきっかけに顔見知りになったオモニたちに呼びかけて、様々なサークルを始めた。

　９６年２月から始めた「女性コーラスグループ」は、朝鮮民謡が習えるとあってたくさんのオモニたちが参加。講師も元九州朝鮮歌舞団で活躍していた分会委員が快く引き受けてくれたので、コーラスグループの実力はめきめき上がり、昨年９月に行われた本部主催の「ハナ民族芸術フェスティバル」では見事優勝するまでに成長した。もちろん賞金３万円は、参考書などの本を購入して北九州初中に寄贈した。このサークルを通じて、ウリマルを覚えたオモニもいた。

　また昨年４月からは、自らが取得していたアメリカンフラワー講師の資格を生かし、教室を開講。若いオモニたちが集まれば当然子供のこと、ウリハッキョの話になり、作品を北九州朝鮮初中のバザーに出品することになった。そして、この売り上げの総計２２万５０００円もすべて北九州初中に寄付した。サークルの場がそのまま分会活動の場になるように、との考えを一つひとつ着実に実践しているのだ。

　宋さんは、「１世のオモニたちが自転車で朝鮮料理を売り歩き、利益をウリハッキョに贈ったように、自分たちの力で学校に貢献したかった」と言う。

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　８年間、夫と姑の介護をしながら分会活動にほん走してきた宋さんだが、分会活動を苦に思ったことは１度もないと言う。

　それよりも「若いオモニたちが分会を大家族のように思い、同胞社会を守っていってくれることがうれしい」と語る。

　最近では、強制連行の跡地をたどるフィールドワークを催し、若いオモニたちが気軽に地域の同胞史を学べる場も設けている。
　そんな宋さんと、穴生分会のオモニたちの夢はまだまだ広がっていく。

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