ニュースの眼

高校新にも「一条校」の壁

インターハイ重量挙げ
記録更新しても認めぬルール


チャレンジ断念した朴徳貴選手(北海道朝高)

 5日、岐阜県で行われたインターハイ・ウエイトリフティング105キロ級で優勝した北海道朝高3年の朴徳貴選手の記録(スナッチ130キロ、ジャーク160キロ、トータル290キロ)は、すべて大会新記録だった。2位以下を大きく引き離しての圧勝だったが、「ライバルは記録だけ」だった彼の本当の目標は、もっと上の日本高校新記録(スナッチ130・5キロ、ジャーク170・5キロ、トータル295キロ)の更新だった。「1条校」ではない朝鮮学校の生徒が高校新を出しても公認されないことを知り、挑戦を断念したのだ。

「各種学校」は対象外

 インターハイの主催は全国高等学校体育連盟(高体連)だが、大会で出た記録を公認、管理するのは日本ウエイトリフティング協会だ。
 協会のルールブックによると、日本高校記録は、学校教育法に定める学校、つまり「1条校」の生徒にしか認められない。したがって、「各種学校」資格の朝鮮学校は対象外となる。大会への出場自体は認められているので大会新記録は公認されるが、高校新記録は公認されないのだ。

幻の日本中学新記録

 北海道朝高がこの事実を知ったのは、試合当日の朝だった。朴徳貴選手の高校記録更新を予想した協会側が、記録を出しても公認できない旨を文書で知らせてきた。

 日本ウエイトリフティング協会の篠宮稔常務理事(千葉県立佐倉西高校)は、「明文化された規定はないが、ルールブックに『学校教育法により定められた学校』と書いてあるので仕方なかった。しかし、個人的には、ルールというものは分かりやすいのが一番だと思っている。同じ大会に出ている同じ高校生だ。大会に出ている以上、区別するのは分かりにくい。十月半ばに開かれる協会の競技委員会で、この問題を取り上げることが決まっている。前向きに検討できれば」と語る。

 北海道朝高ウエイトリフティング部の金尋監督(在日本朝鮮人ウエイトリフティング協会会長)は、「正直言って頭に来たが、最大の目標は金メダルだったので、気持ちを切り換えて確実に大会新を出していく作戦に変更した。中級部の頃から毎年一緒の大会に出て、競ってきた同じ選手同士なのに、朝高生だけ記録にならないなんて、どう考えても理不尽だ。協会の方で検討するというので、公式な抗議はしなかった。後進のためにも、協会の決断に期待したい」と話していた。

 朴徳貴選手は97年8月、中級部3年の時、初出場した全国中学生ウエイトリフティング選手権の83キロ級で、全部門日本中学生新記録を出し、優勝した。しかし、その記録も中学生新記録として公認されてはいなかったのだ。

処遇自体の見直しを

 朝鮮学校は学校教育法上、「学校」ではない。

 いわゆる日本の普通の学校は、同法第1条で定められた「1条校」で、朝鮮学校には、それより格段に低い「各種学校」という法的地位しか与えられていない。

 そのため、教育補助や各種資格の面で大きな格差がある。過半数の公私立大が独自に受験資格を認可しているものの、正式には、大学の受験すら認められていない。

 スポーツの分野でも、以前は中学校や高校の全国大会に出場することはできなかった。しかし、それを差別だとしてたたかった在日同胞、生徒らの運動、またこれを支持する日本市民らの世論によって徐々に門戸が開かれるようになった。

 全国高等学校体育連盟(高体連)は94年度から、全国中学校体育連盟(中体連)は97年度から、それぞれ外国人学校の全国高等学校総合体育大会(インターハイ)、全国中学生体育大会への参加を認めた。この時期を前後して、各種目別選手権の出場資格も認められるようになった。

 しかし、これらはあくまでも特例的な措置であって、高体連、中体連への正式加盟はいまだに許されていない。

 いたるところにある「1条校」の壁。同胞たちの力で一つひとつ壊してはきたが、まるでモグラ叩きのように、様々な壁が首をもたげてくる。根本的な解決が必要だ。

 日本政府は、全般的な朝鮮学校処遇自体の見直しを図るべきだ。
 (韓東賢記者)

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