みんなの健康Q&A

夏バテ(上)/なぜ起きるのか

金秀樹
西新井医院副院長


自律神経の乱れが原因

 Q 夏バテとは、どんなものですか。

 A 夏の高温・多湿性気候に様々な生活環境要因が重なって引き起こされる身体の病的状態を総じて称したものです。空調設備のなかった頃は、文字通り暑さとストレスのために食欲が落ちてやせ、だるさで気力もでない、というのが典型的な症状でした。

 現在ももちろん基本的には同じですが、最近は、冷房病という言葉もあるように、冷房のきいた室内と猛暑の外とを行ったり来たりする結果、だるさや集中力の低下、胃腸障害、さらには神経痛や生理不順が引き起こされます。時には頭痛や肌荒れなどとともに、夏かぜがぬけないといった不調をきたすこともあります。

 Q どういう人がなりやすいのでしょうか。

 A 次のような項目にあてはまる方はとくに夏バテに要注意です。@朝食を抜くことが多く、総じてあっさりしたものですませるA冷たい清涼飲料水をよく飲むB仕事などで夜遅くなることが多く、睡眠時刻が不規則であるC冷房がよくきいている所にいることが多いD汗をかく運動をする機会がほとんどない。

 Q それでは、夏バテが生ずる原因はいったい何なのでしょうか。

 A 私たちの体は、自律神経の働きによって、昼間は活動的になり、夜間は安らぐように調整されています。こういう日内変動に加え、気候の変化に順応し、体感温度を調節するような働きが備わっています。ところが空調設備の普及で年間を通して適温になっているため、季節変動に応ずる体内時計の感覚が鈍ってきています。

 例えば、外の猛暑と冷え冷えの室温の差に体が順応しきれず、自律神経の乱れから、前述のような様々な症状が出てくるのです。

 次に重要な原因は食欲不振です。温度と湿度が高くなると胃酸の分泌が低下し、食欲がなくなってしまいます。こんな時に、水分や冷たい物をとり過ぎると胃酸を薄めてしまい、温度差の影響もあって、せっかくとった食事がうまく消化されず、十分に吸収できなくなり、体力が落ちてしまいます。

 もう1つの問題は、食事の量や回数が減ることにより、1日に必要な栄養素が不足してしまうことです。朝食は食べない、昼食は野菜などの具が少ない麺類だけ、お菓子と糖分の多い清涼飲料水を食事代わりにしていませんか。これでは元気の源となるタンパク質、ミネラル(カルシウム、鉄分など)やビタミン類(ビタミンB1、B2など)が足りなくなり、「だるい、疲れやすい」などといった症状が出てきます。

 3番目に重要な原因は暑さ(熱帯夜)による睡眠不足です。熟睡できず、翌朝に疲れが残ったまま出勤・登校という人もいるでしょう。これが毎日繰り返される間に、疲労が蓄積していきます。

冷房を上手に使うこと

 Q 夏バテの予防・解消法について具体的に教えてください。

 A 最初に冷房のことに触れましたが、現代生活においては、冷房なしでは実際上いろいろ支障をきたすことは否定できません。要はいかに上手に冷房を使うかということなのです。まず押さえておかなければならないのが、室温は夏服の人を基準に考えるのが合理的であるということ。また、女性は男性に比べて皮下脂肪が多いものの、冷えには弱いということです。

 そのうえで、最小限不快に感じない程度に冷房を使用すべきです。外気温との差が5度以内になるよう温度を設定することを勧めます。また、夜間はあまり低温に設定しなくても、除湿機能だけで十分涼しくなります。冷房の風向きをうまく工夫して空気の流れを自然のものとしたり、室温に応じて上着や膝掛けを使うのも良いでしょう。

 Q 服装に関しては?

 A まず下着は汗を吸収しやすいものにして、こまめに取り替えましょう。胸の谷間や首、背中のくぼみは、暑さに敏感なわりに汗が蒸発しにくいところで、ここの風通しが良いことが涼しい衣服の条件です。

 ところで、日中、外にいる時は太陽の直射熱を反射する白い服が体温の上昇を防ぎますが、室内では逆に体から熱を吸収し外へ逃すので、黒い服が涼しく感じられます。帽子は日光から頭部を守り、体温が上昇するのを防ぎます。

 Q 汗っかきで、いつもつらい思いをしているのですが。

 A 夏に汗をかくことは体にとって必要なことです。汗をかくことにより、熱を放し体温を調節します。こまめに汗をふいて、着替えをいつも用意しておいて下さい。もっとも、適度な運動でいい汗をかくことは気分を壮快にしてくれるだけでなく、適度な疲れが心地よい睡眠を招いてくれます。

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