人気の朝鮮料理教室/広島市・二葉公民館主催

作って、食べて、文化に触れて


「子供の野菜嫌いなくなった」
「家庭に朝鮮の食材ぎっしり」

 「猛暑を吹き飛ばすには、やっぱり朝鮮料理が一番」――広島市東区の二葉公民館で6年間、毎月1回続けられてきた朝鮮料理教室に市民の関心が高まっている。気温が37度まで上がった7月22日、夕方6時からの教室をのぞいた。(粉)

生徒は500人も

 公民館の委託を受けて、講師をしているのが、女性同盟広島県本部李京順委員長。95年4月の開講以来、これまでのべ500人以上の生徒らが教室に通っている。

  人気の秘訣を「先生の優しさと丁寧な教え方」と語るのは六年間一度も休まず通っている自称「一期生」森吉照美さん(60)。この日のメニューの「ム」作りを講師の指示に従って手際良く、そば粉から作っていく。

 「60回近く通っていますから、少しは要領がつかめるようになりました。朝鮮料理の魅力は飽きない味ですね。暑い時に辛いスープを食べて、食欲もモリモリですし。主人や子供も楽しみにしてくれていますのでやめられません」と快活に笑う。

 朝鮮料理にはまった森吉さんは弟の妻の小林あつみさん(52)も誘い、教室でも和気あいあいと習っている。「私も『1期生』です。お陰で家庭料理のレパートリーが増えて、家族から喜ばれています。それにしても家の調味料が違ってきましたね。以前はにんにくや粉とうがらし、ごま油は置いていませんでしたから」と小林さん。

 この日は20人ほどの生徒が参加した。子連れで参加したのは、角山知美さん(32)。通い始めて2年ほどになるが、子供の嫌いな人参をチヂミに入れてやるとよく食べてくれるようになったと話す。教室の雰囲気も気にいっている。「おおらかで楽しい。自然に朝鮮料理が身につくような気がします」。

 「ム」ができると今度は「ム」サラダ作り。レタスやトマトなどの野菜をきれいに洗っている徳富直也くん(11)。小2から母の敏子さん(39)と欠かさず参加してきた。「たまには疲れて休もうかという時もあるが、直也が僕いくよと言うので、皆勤しています」。子供たちが、キムチの辛さになれて、ナムルをいっぱい食べて、いつもごはんを腹いっぱい食べるようになりましたと語る。

国際結婚も

 講師の片腕として、メニューにあわせた食材や調味料の準備などの裏方を一手に引き受けてきたのが、市内の高校の非常勤講師・丁稔明さん(40)と高校教師香川照美さん(36)夫妻。13年の交際を経て結ばれたばかり。2人は国際結婚だが、香川さんの朝鮮に対する思いは半端じゃない。92年に、直行便で平壌を訪ねたのも「日本での朝鮮への偏見を少しでもなくしたい」という一途な気持ちからだった。

  過去の植民地支配の清算も果たさず、根強い民族差別の土壌を引きずる日本社会。そこを少しずつでも崩したいと情熱を燃やす香川先生が出会ったのが朝鮮青年の丁さんだったのだ。2人は同じ高校で、人権教育に取り組む同志として出会って、愛を育んだ。

  そんな2人は料理教室でも生徒たちから信頼されている。「料理には、民族の伝統や知恵がすべて込められている。料理を習うというのは、その文化を敬い、親愛の情を持つことだと思います。料理を通じて、もっともっと、日本の中の朝鮮への偏見をなくしていきたい」と香川さんは語る。

  2人は結婚後初めて開いたホームパーティーで、知り合いの同胞8人を招いた。料理教室で腕を磨いた2人がテーブルいっぱいに並べたのは「チヂム、ゆで豚、ナムル、サラダ、豆腐チゲ、キムチ」など。あっという間に料理は健啖家らの胃袋に収まり、「美味しかった。次もよろしく」との声が上がったと香川先生が嬉しそうに話した。

 この料理教室が開講するきっかけになったのは、広島で六年前に開かれたアジア競技大会だった。市内の公民館を拠点とした1国1館支援運動が展開され、二葉公民館が共和国選手団の支援を受け持った。結局、共和国は不参加となったが、せっかく準備したものを、そのまま解散するのではなく、身近な国際交流に生かそうと奔走したのが居酒屋を営む中村俊雄さん(57)だった。「公民館を利用した『朝鮮料理教室』を開けば、市の広報で生徒の募集もできるし、講師料も市から出る。美味しいものを作り、食べて、朝鮮文化を学べて、こんなにいいものはないと、この六年間にすっかり、市民の間に定着しました」と喜ぶ。

 今後は、この良い雰囲気を朝鮮学校支援につなげたいと次のステップへの構想を練っている。

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