同胞のための同胞による訪問介護事務所
フレンド高麗オープン

良質の居宅サービスめざす

生きる意欲と自立の促進


課題は生活実態の把握/同胞ヘルパーの育成

 川崎高麗長寿会(盧垠会長)が、地域同胞のための訪問介護サービスを行う基準該当居宅サービス事業者「フレンド高麗」(徐子連代表)を立ち上げ、1日に川崎市の認定を受けた。同長寿会によると、市内には65歳以上の同胞高齢者が約1000人いるが、同胞による同胞のための訪問介護事業者は、「フレンド高麗」が初めて。今後、訪問介護、訪問入浴サービス、通所介護、福祉用具貸与などの居宅サービスを行う。

市の認定制度

 「フレンド高麗」は、市が認可権を有する基準該当居宅サービス事業者(以下サービス事業者)の認定を受けている。都道府県が認める指定事業者が法人格を有し、事業範囲が全国に及ぶのに比べ、サービス事業者は事業範囲が市内に限られている。地域の実態に則した、きめ細かいサービスの提供を目的とした制度である。

 「高齢者の生きる意欲をわかせる、自立を促せるサービスをどれだけ提供できるかが介護サービスのポイント。とくに外国人の介護の場合は、生活習慣、文化、歴史を把握してこそ、質の高いサービスを提供できる」。川崎市介護保険課の佐々木元行主管は、「フレンド高麗」には、外国人高齢者のニーズをくみ取ったサービスをどんどん提供して欲しいと話す。

民族団体と協力も

 「フレンド高麗」は、同胞向けの質の高いサービスを提供するための課題を2点にまとめる。

 1点は、同胞高齢者の生活実態の把握で、2点目は介護を担う同胞ヘルパーの育成だ。

 介護保険に関する同胞固有の問題としては、まず申請後に行われる調査での、1世同胞と日本人調査員との言葉の壁がある。実際にサービスを受ける場合にも、入所施設が日本人向けで、ヘルパーなどが日本人の場合、生活習慣の違いが問題になる。

 また、根強い民族差別の問題もある。

 「フレンド高麗」代表の徐さんは、ホームヘルパーの研修会で、デイサービス(在宅老人を施設に送迎し、入浴や食事などを提供する支援事業)を利用していたある同胞が入浴場で順番を待っていたところ、「お前、朝鮮人だから後ろに行け!」とどなられたり、昼食中に「弁当が臭い」とば声を浴びせられた、という話を耳にしたという。実態の把握が急がれている。

 現在、「フレンド高麗」のスタッフは、指定基準の最低人数である3人。これでは、質の高いサービスの提供には限界がある。

 介護保険制度の実施前は、身体介護が相当な比重を占めると予想されていたが、制度がスタートすると、サービスの内容は家事援助が圧倒的に多かった。こうした実状を踏まえ、「1世の生活を良く知る同胞ヘルパーの育成が急務となっている。市内の民族団体とも手を取り合い、早急に解決したい」と徐さんは語る。

活発な行政交渉

 川崎高麗長寿会が発足したのは昨年6月。この間、同胞高齢者が安心して楽しい老後を送れるよう、様々な活動を進めてきた。

 昨年の7月には、市の職員を講師に招き、介護保険制度の説明会を開催。また、市議会に対しては、介護保険の適用における民族差別の防止と、無年金状態の同胞高齢者に対する負担軽減を求める要望書を提出するなど、積極的な対応を求めてきた。この要望書は昨年末に市議会で全会一致で採択された。

 現在、市は無年金状態にある同胞高齢者の介護保険料について、特別の処置を講じる予定はない、としているが、長寿会では引き続き要請を行い、同胞高齢者が安定した生活を送れるようサポートをしていくという。

 長寿会は、「フレンド高麗」に先立ち、5月には「ソロトプチャ(助け合おう)高麗」(ヘルプ高麗)を発足させた。健康促進のためのリズム体操、朝鮮舞踊、社交ダンス、リハビリの基礎や、朝鮮の歌を学ぶ文化活動などを行っている。

 行政に対する要請も活発で、川崎市に対しては、当初から老人福祉団体としての認可および補助金の給付を求めてきた。その結果、今年度から「外国人老人クラブ補助金」(年額12万5100円)の支給を受けられるようになった。外国人老人クラブという名目で、市が補助金を支給したのは初めてのことだ。(張慧純記者)

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