グローバル新風

行政で投資確保


 シンガポールは、住民や企業がわざわざ役所に行かずとも、すべての行政手続をインターネットで処理できる電子政府の構築を試みている。

 「シンガポール・ワン」と命名された計画のもと、行政機関から学校、病院、家庭に至るまで国中に高速通信網が張り巡らされ、全国民にICカードが配られる徹底ぶりで、同じく電子政府構築を目指す欧米諸国を尻目に、世界で最も「効率的な政府」として評価が高い。

 同国が電子政府構築に励む目的は、国民サービスの充実や行政組織の効率化もあるが、最も重視されているのは対企業サービスの充実だ。日本の淡路島ほどの面積に約300万の人口しかなく、これといった資源もない同国だが、「シンガポール株式会社」と言われるほどの商魂で、多くの投資を誘致してきた。

 企業にとって、効率的で質の高い政府が存在することは、事業環境の極めて重要な要素になる。市場のグローバル化で、企業が国内に立地する必然性をなくした今、多国籍企業の投資先としての比較優位を21世紀も引き続き維持するために、高効率の電子政府であろうと言うわけだ。隣国のマレーシアも、以前から国家戦略として「MSC(マルチメディア・スーパーコリドー)計画」に取り組んでおり、魅力ある事業環境を整えようと躍起だ。ほかにも、カナダの「ガバメント・オンライン」、ニュージーランドの「eガバメント」など、電子政府計画が目白押しだ。

 もはやシンガポールならずとも、国家の「株式会社化」が求められている。国家規模でのメガ・コンペティション(大競争)――時代の幕は、すでに上がっている。(李達英=朝・日輸出入商社)

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