「南北首脳の抱擁」に立ち会った姜萬吉先生
先日、東京の講演会で姜萬吉高麗大学名誉教授とお目にかかる機会があった。先生は6月の南北首脳会談に随行して平壌から戻ったばかり。
朴正煕軍政のもとで数々の弾圧にあい、80年の光州事件の際にも、全斗煥の戒厳軍に拘束され、大学を追放された。長い間の独裁政権との不屈の闘いと信念。良心の学者として尊敬の念を抱く在日同胞も多いだろう。 平壌で両首脳の握手という歴史の現場に立ち会った先生は「もう死んでも悔いはない」(雑誌「世界」8月号)と感激を綴った。 その先生に「金正日総書記の印象はいかがでしたか」と聞いてみた。先生は「ソウルに戻った後、一番たくさん聞かれた質問がそれでしたよ」と微笑んだ。 そしてこう答えた。「みなさんがテレビで見て感じたそのままです。率直で、素朴で、礼儀正しく、大胆で…、それが総書記本来の姿ではないでしょうか」 先生は70年にこの時代を「分断時代」と名づけ、それを平和裏に克服していかなければならないという歴史学を提唱した。それがようやく成就しようとする場に居合わせた喜びははかり知れないものがあろう。 「朝鮮半島の分断状態は東アジアの火薬庫であり、戦争の危機を常にはらみ続ける。しかし、和解と共存、統一が実現すれば、東アジアはもちろん世界の平和に貢献することになる」 そのためにも南北首脳会談の歴史的合意を理解し、支持する挙族的な態勢を作り「一人一人が良識ある(チヘロプケ)行動をしよう」と語った。 長い風雪に耐えた人の静かな言葉が胸に響いた。(粉) |