自分の居場所見つけた

かけがえのない友達とチャンダン


この日のために一生懸命練習したサムルノリを披露する学生たち


民族に触れた文化公演

 マダンの最後を飾る支部別の文化公演。8月とは言え、夜になると吐く息も白くなる尾瀬の夜空に、赤々とキャンプファイヤーが燃え上がった。

 四国学院大学1年の殷庄治くん(18)は、同大学3年の留学同四国支部長を務める林忠彦くん(21)の誘いでマダンに参加。つたないウリマルだったが、「祖国統一を達成しよう!」と、声をふりしぼってみんなに呼びかけた。殷くんは、3ヵ月前に生まれて初めて自分の名前を朝鮮語で書けるようになった。

 「ちょっと失敗したけど、ウリマルでアピールできてうれしかった。何も知らないのでこれからは、祖国のこと、民族のこと、たくさん勉強していきたい」と笑顔で語った。

 他の参加者も、「チャンダンのリズムを聞いているだけでわくわくしてくる。熱いものが込み上げてくるような感じ」、「パジ・チョゴリを着るのは幼い頃以来。サンモを回す練習で首が痛くなったけど、楽しくできて良かった」と顔をほころばせる。チャンダンによって眠っていた民族の魂が揺り起こされたのだろうか。

 フォークダンスを楽しんでいたある学生は、「日本の友達には民族的な悩みを打ち明けられない。だからとても息苦しかった」と率直に語る。「マダンはそんな僕にとって自分のいるべき場所、という感じ。安心できる場所だ。ここで出会ったトンムたちはかけがえのない存在です」

 「今年が2回目の参加だが、昨年は通名のままでいいのでは、と思っていた。今回参加して、トンムたちと話す過程で本当にこれでいいのか、と考え直すようになった。名前を奪った国の国籍に変えてしまうのは絶対にいやだ。ハラボジたちが命をかけて守ってきたことを私たちが受け継いでいきたい」

 「日本人とも違う、民族教育を受けていないので朝鮮人とも言えない。そんな自分がいやだったし、日本学校でいじめられたりもした。そんな自分に自信を与えてくれたのは、マダンで出会ったトンムたち。同じような思いをしているトンムたちに、今度は私が勇気を与えてあげたい」

 キャンプファイヤーに照らされた参加者1人ひとりの顔は、新たな希望に向かう喜びでキラキラと輝いてみえた。自分たちを苦しませ、悩ませてきた朝鮮人の血が、実は希望と勇気の源であることを自覚し始めたのではないだろうか。

 彼らにとってサマーセミナーは、人生のもう1つの貴重な思い出となるだろう。

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