民族経済の均衡的発展へ

共同宣言に則して三星グループの訪北


 【平壌発=金志永記者】 朝鮮アジア太平洋平和委員会(ア太委)の招待により、南の三星グループの副会長一行が7月26〜30日、平壌を訪問した。近年、ア太委と三星グループは電子工業部門を中心に経済協力事業を推進してきたが、副会長一行の今回の平壌訪問は、南北共同宣言の調印、発表後、同グループ初の訪北となる。

 平壌で行われた一連の協議では、「共同宣言の精神に則して協力事業を新たな段階で推進」(金容淳ア太委委員長)していく必要性が再三、強調された。

 6月15日に調印された南北共同宣言は、第4項で民族経済を均衡的に発展させていくことをうたっている。南北の経済協力は、共存、共栄、共利を掲げ、国の統一問題を民族が力を合わせて自主的に解決していく過程の一環であり、単に個別企業の利益のみを追求する経済活動とは違う。前例のない事業であるため、双方の創造的な努力が必要だ。

 「すべてのことを消極的に行わず、大胆に進めて行くべきだろう」
 北側の郭範基副総理は、南北関係の新しい局面に対応し、経済協力事業担当者が思考を転換する必要性について指摘した。

 また呉秀容電子工業相は「民族電子産業を立ち上げ、わが民族の気概を示しましょう」と言いながら、北側の電子工業の技術的潜在力について指摘した。

 科学重視思想を掲げて強盛大国建設を推進する北側は、総合的な電子工業基地を整備するための技術開発と人材育成を行っていく立場から、三星グループとの協力事業を進めようとしている。三星側も、将来的には協力事業が単なる賃加工のレベルに止まるべきではないとの立場を取っていることで知られている。もちろん、いまだ分断構造が残っている条件のもとで、賃加工と言えどもその経済的実利を追求するためには様々な障害が存在するのは事実だ。

 しかし、北側の電子工業相は「他の分野より進んでいる分、困難もあるが、共同宣言の履行によって解決できる問題だとみなしている」と、経済協力事業が今後、当局間の対話とリンクしながら進んでいくとの見解を示した。つまり、対話のための雰囲気がいっそう整い、共同宣言の履行を促す方向で経済協力を進めてこそ、諸問題も解決されるということだ。

 共同宣言の発表は、経済人を民族の和解と団結、統一の直接的な牽引役に押し出したと言える。経済協力の障害を除去する作業は、分断構造自体を壊す作業につながる。

 三星グループの尹鍾竜副会長は平壌訪問中、グループ傘下の卓球選手団が北の牡丹峰選手団と行った統一卓球競技大会が民族の団結した力を示したと指摘、その感動を経済協力事業にも生かして行くべきだとして、「経済協力事業は南と北が共によく暮らせる民族繁栄の道だ」と述べた。

 民族経済を均衡的に発展させていくことをうたった南北共同宣言は、南北経済協力の新たな境地を開拓したと言えよう。

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