注目集める温浴ビジネス

健康ランド・スーパー銭湯が人気


 社会不安の深刻化という現代日本の世相を反映し、「疲れた心と体のリラックス」、いわゆるヒーリング(癒し)効果をうたって人気のリラクゼーションビジネス。中でも注目を集めているのが、古来からの風呂文化に根差しつつレジャー的要素を取り入れた、健康ランドやスーパー銭湯などの温浴施設である。同胞業者も少なくない温浴業界の現状を見た。(柳成根記者)

群馬健康ランド千湯/低額・清廉「同胞の名店」
秘訣は徹底したリサーチ主義

 「明日の仕事への活力に」をモットーに、群馬県内でも有数の健康ランドとして抜群の知名度を誇るのが、今春オープン10周年を迎えた、高崎市の「群馬健康ランド千湯(せんとう)」。県内では健康ランドのパイオニアである。社長は県商工会副会長の千秋夫氏(57)。現在は長男で県青商会副幹事長の千尚二営業部長(29)に、経営を一任している。

値下げで売り上げ2割増

 「アボジ(父)の風呂好きが高じて」(千部長)、始めた同店。周辺にはスーパー銭湯が立ち並ぶ。低価格が売りのスーパー銭湯は、さぞや強力なライバルのはずだが、「逆に向こうからうちに客が流れている。向こうのほうが経営は厳しいのでは」と、千部長は笑う。

 居並ぶ競合他店を引き離す同店の売りは、低価格でサービス充実というコストパフォーマンスへのこだわりと、地下120メートルから汲み出す湧水のみ使う徹底した清潔志向。これが若者を中心に圧倒的に支持され、週末には1000人以上が訪れる人気店となった。

 オープン当時、辺りに大型温浴施設の類いはなく、同店も客足の途絶えない盛況ぶりだった。だが、バブル崩壊で消費者の財布のヒモが固くなると、500円の低価格を打ち出したスーパー銭湯が乱立。一律1900円にこだわる同店は、主婦やサラリーマンなど「昼間の空いた時間にちょっとひとっ風呂」というライトユーザーを奪われ、売り上げも低迷した。

 「金額設定が高いのでは」「でも安くすれば質が落ちる」…。そこで取られた起死回生の「秘策」が、昨年4月から始めた、昼間帯のみ半額の950円にする「バリュータイム」だ。

 「採算が取れるかドキドキした」(千部長)というバリュータイムだが、これは単なる値下げではなく、「価格が同程度ならサービスが良くてきれいな店に客は流れる」というリサーチに基づいたもの。結果、初年度は苦しんだものの、今年に入って競合他店から客を取り戻し、売り上げも2割アップ。今も好調を維持しているという。

「業者のレベル低下」

 「不況の折り、業界の現状は厳しい」と千部長は言う。癒しを求める現代人のニーズで需要は高まっているが、肝心の供給する側のレベルが今一つ。人口や年齢層といった地域の特色をきちんと調べずに開業に走る人が多いそうだ。

 千部長が掲げるのは、徹底した「リサーチ主義」。「群馬では、女性ドライバーが最も多いことから分かるように、移動に車は欠かせない。なのに、ノウハウのない人は経費節約と言って駐車場を狭く作るから、客が入らない。また、人口が少ない土地で、スーパー銭湯のそばに似たような店を建てる。これでは持つはずはない」と千部長。同店では開業に当たり、人口、客層、自家用車の有無、競合他店の客層などを調べ回った。「新規開業を目指す人は、現場調査は不可欠」とアドバイスする。

 今でも、社員全員が駅前でビラ配りをするという地道な努力を続けている同店。「目標は日本一の健康ランド」と鼻息は荒い。

千湯半減の影で1兆円産業
不況と大手、同胞経営を直撃

 温浴施設には、健康ランドやスーパー銭湯のほか、伝統的な町の銭湯やサウナ風呂などの業態があり、明確な線引きは難しい。

コンセプト重視

 行政管理庁の産業区分では、銭湯のように体の洗浄が主目的の「日常生活の用に供する」浴場を公衆浴場、健康ランドやスーパー銭湯、サウナ風呂など付加価値で「薬治、美容など特殊な効果」が付く施設は特殊浴場と定義している。だが、サウナ付きの銭湯は珍しくなく、サウナがあるからサウナ風呂とは言えないし、遊戯施設を持つ健康ランドは温浴業でなく娯楽業ではないかとの見方もある。このため、業界では名目上の区分よりも、施設ごとのコンセプトの違いを重視している。

 温浴業界では価格と機能の両面をもとに業態区分をしている。
 一つの機能を追求するサウナや銭湯の市場規模が縮小、付加価値が売りの健康ランドやスーパー銭湯は逆に拡大し、好調・不調の差がはっきりと出ている。

客数は横ばい

 厚生省の統計(1997年)によると、80年代に全国で1万5000軒以上あった銭湯は、97年には約8400軒と20年前の半分になった。サウナ風呂も年々、減少傾向にある。

 半面、健康ランドやスーパー銭湯といった、同統計では「ヘルスセンター」のカテゴリーに属するジャンルは、97年現在で約1700軒。絶対数こそ少ないが、最近5年間で28・4%増と、全統計中唯一の右肩上がりである。市場全体も、健康ランドやスーパー銭湯の好調で、97年には1兆円規模になった。

 背景には、消費者の意識変化がある。家に風呂があるのは今や常識で、体を洗いたければ銭湯ではなく家で風呂に入る。これが「銭湯離れ」の最大の要因だ。

地域性生かし

 全国46都道府県にある47の地域商工会に、同胞業者の有無を問い合わせた。以下は、商工会会員が経営する全国の健康ランドとスーパー銭湯の一覧である(民団・未組織同胞は除く。また、1企業で同名の店舗を2軒以上経営しているケースや、一般的な銭湯・サウナ風呂は除外)。

 把握が不十分な地域も含めて約半数が、いないか、いたが経営難で店を手放したという調査結果が出た。13店舗は、そうした中でようやくつかめた所である。

●長野・SS「百葉゜千湯」(ひゃくぱーせんとう)
 〒386−0041 上田市大字秋和字立石354−3
         рO268・28・1126

●群馬・KL「群馬健康ランド千湯」
 〒370−0071 高崎市小八木町1780
         рO27・362・4126
http://www.sento.co.jp 

●栃木・KL「健康サウナ南大門」
 〒321−0966 宇都宮市今泉3−2−18
         рO28・627・3111

●埼玉・KL「健康ランド武蔵野」
 〒333−0861 川口市柳崎1−22−1
         рO482・61・6111

●東京・KL「湯〜とぴあ 荻窪」
 〒167−0043 杉並区上荻1−10−10
         рO3・3398・4126

●静岡・SS「アサヒ乃湯」
 〒433−8125 浜松市和合町1146
         рO53・478・4126

●岐阜・SS「太古の湯」
 〒500−8281 岐阜市東鶉3−81
         рO58・277・4126

●愛知・SS「ふろ屋」
 〒444−0008 岡崎市洞町字西五位原6−1
         рO564・28・3557

●愛知・SS「シャオ 六万石の湯」
 〒445−0891 西尾市下町ショッピングセン
         ターシャオ南
         рO563・57・1126

●広島・SS「五日市天然温泉ゆらゆら」
 〒731−5106 広島市佐伯区利松2−17−10
         рO82・292・2226

●岡山・KL「岡山健康ランド」
 〒701−0203 岡山市古新田1233−2
         рO86・281・2626

●香川・KL「やしま第一健康ランド」
 〒761−0113 高松市屋島西町2274−5
         рO87・841・1126

●福岡・SS「嘉穂の湯」
 〒820−0083 嘉穂郡穂波町大字秋松字上永入
         848−1
         рO948・23・9907
※KLは健康ランド、SSはスーパー銭湯の略

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