6月から障害年金受給
滋賀県在住の金太一さん、国民年金「事後重症」認定
1982年1月1日、国民年金法の改正により国籍条項が撤廃され、その時点で20歳に達していない在日外国人障害者に、年金が支給されるようになった。しかし、20歳に達していた在日外国人障害者(現在38歳以上の人)は制度の枠から取り残され、年金支給の道は閉ざされたままだった。
ところが今年6月から、滋賀県大津市に住む在日同胞障害者、金太一さん(60)に、国民年金障害基礎年金が支給されることになった。 年金差別に納得のいかない金さんが弁護士らの協力を得て、なんとか受給できないかとその方法を探した末にたどりついたのが、「事後重症」という制度だった。 金さんは3月、大津市福祉保健部年金課に「事後重症」の申請を行い、大津社会保険事務所の審査を経て、国民年金法第30条の4、2項「事後重症」に基づき、障害等級1級と認められ、年間100万5300円が支給されるに至った。(ここでいう障害等級は、年金法で定める等級で、都道府県知事が発行する障害者手帳の等級の程度と必ずしも一致するわけではない) 「事後重症」とは、障害等級に該当しない程度の疾病や負傷が後になって悪化することを指し、65歳前に請求して、障害等級に該当する状態と認定されれば、障害基礎年金が支給される。 年金課の西村彰一郎課長は、「在日外国人障害者が『事後重症』の認定を受けるためには、国籍条項撤廃(82年1月1日)時を基準に、病状が悪化したということを証明しなければならない。制度の枠外にあった基準日以前については、障害等級に該当する障害の状態に至っていなかったことを立証する必要がある」と語る。 金さんは出生時に脳に損傷を負い、18歳の時にはポリオにかかった。その後回復して立命館大学卒業後、病院に勤務するなど、20、30代は不自由ない生活を送るまでになった。 だが、30代終わり頃から右肩が上がらなくなり、右足もひきずるようになり、41歳の時(国籍条項が撤廃される前年)に障害者手帳2級の認定を受けた。日常生活に支障はなかった。 大津社会保険事務所によると、金さんの場合、手帳2級の認定を受けたものの、その時は歩行はでき、字も書け、日常生活には支障がなく、障害等級に該当する障害の状態には至っていなかったことが判明したという。 金さんはその後(基準日以降)の91年、家の中で転び、全身の自由がきかなくなって以来、車いすの利用を余儀なくされ、今回の審査で障害等級1級の認定を受けた。 |