在日朝鮮人人権協会 第3回研究交流会
「21世紀在日同胞の法的地位」
− 今私たちの民族と国籍は −
公開シンポの発言から
公開シンポでは、会場からも活発な意見が繰り広げられた
(7月1日、福島)
「在日同胞にとって、祖国と民族を指向しなければならないという心情を確固たるものにした」南北首脳会談の実現、その一方で「今現在も民族性を尊重せず、否定する日本社会にあって、だからこそウリ民族、ウリ国籍を守る問題がより重要に提起されている」(柳光守・在日本朝鮮人人権協会会長のあいさつ)。この2つの認識のもとに開かれた交流集会では1日目に公開シンポジウム、2日目には分科会が行われ、活発な論議が繰り広げられた。
国籍保持の意義、重要 公開シンポは、人権協会近畿地方本部の洪敬義副会長の司会のもと、朝鮮大学校の金哲秀教員、李博盛弁護士、同協会事務局の金静寅さんがパネラーとして参加し、メインテーマである「21世紀 在日同胞の法的地位」―今私たちの民族と国籍は―について、活発な論議が展開された。 朝鮮大学校の金哲秀教員が在日同胞にとっての民族と国籍とは何か、について報告した。 金教員は「朝鮮民族として生きるうえで本国の国籍を保持することの意義は今なお重要だ」と指摘した。 そして「在日同胞の民族教育を認めない日本社会は、徹底した単一民族の国民国家原理に立脚しており、そこでの国籍観は民族と一致している。そのような社会には『朝鮮系日本人』が存立し得る余地はない」と述べた。 さらに最近、同化政策には反対しながらも、「帰化」を許可性ではなく申告制に改め、日本国籍を取得しやすくすべきだ、などの主張(この主張の根拠にあるのは、1952年のサンフランシスコ講和条約発効によって、在日同胞が植民地時代に有していた日本国籍を一方的にはく奪されたことで、その後の選挙権や社会保障から除外されたとするもの)が出ていることに対して次のように指摘した。 「在日同胞が受けている制度上の差別の原因を国籍選択が認められなかったことに求めるとすれば、本国国籍を選択する人々への国籍差別を正当化することにもつながり、また、日本の敗戦当時、『日本臣民』からの解放を喜んだ圧倒的多数の朝鮮人の意思に鑑みれば、権利制約の不当性を敢えて国籍の選択に求めるのではなく、他の政治的・法的問題としてとらえるべきだ」 統一祖国の国籍取得も 李博盛弁護士は、朝鮮籍が減少している状況について、現在の法律は、朝鮮籍を取得、もしくは維持しにくい状況にあると指摘。今後は、南北統一が現実味をおびてきたなかで、在日同胞の外国人登録上の表示を近い将来的に統一表示にすると考えていくべきであり、日本国籍と朝鮮国籍の両親の間に生まれ、現在日本国籍となっている人は、統一祖国の国籍を取得できる可能性があると述べた。 金静寅さんは、エスニックな自覚をもって、日本社会でよりよき市民として生き、そのうえで被る差別や不利益などを解消していくという考え方の例として、カナダやアメリカなどの多文化主義国家、多民族国家の例が引用されるが、カナダの政策などは、積極的に移民を受け入れてきており、民族的アイデンティティの尊重と保障を担保にしているため、同化政策を強いる日本とは基本的姿勢が違うと述べた。 会場からは金東鶴行政書士が、民族性保持と日本国籍取得は現情勢では、両立し得ないとする意見を述べ、日本の「帰化」行政の実態について次のように言及した。 「『新坂中論文』(1998年1月)では、帰化者の増加を日本社会の成熟を表していると肯定的に評価しているが、『帰化』行政の実情は、現在もいびつで、差別的であり、日本人的でないものへの不寛容、人権感覚の欠如などを上げることができる。そうした現実にてらして見るとき、『積極的日本国籍取得論』は在日同胞の運動論として現状から遊離しており、本質的な問題がどこにあるのかを見極めなければ多くの同胞から支持を得ることはできない」と語った。 会場からはそのほかにも、「朝・日国交正常化後の在日同胞の国籍はどうなるのか」、「日本社会が多文化容認の社会に変わったら2重国籍という考え方が選択肢として存在するのか」など様々な意見や感想が述べられた。 ダイナミックな発想を 最後にパネラーが、それぞれ感想を述べた。 金教員は、「21世紀は、日本だけの変化でとらえ、こだわるのではなく、相互的に多くの選択肢をもつべきだ。今の環境を固定的に考えすダイナミックに発想することが必要だ」と述べた。 李弁護士は、「南北首脳会談の実現によって、民族、国籍に今まで嫌悪感を抱いていた人も含めて、近い将来、統一朝鮮に帰属できるという可能性を全員が自覚すべきだ。そのための論理的な構築をやっていくことが今後の課題だ」と強調した。 また、金静寅さんは「様々な価値観のなかで、民族のアイデンティティの最大公約数を求めるとしたら、在日はかつて植民地によって日本に存在するという歴史を共有してきた点だと言えるが、これからは統一後の輝かしい歴史を共有できるという点だ」と語った。 (金美嶺記者) |