みんなの健康Q&A
食中毒(上)/O157
恵クリニック院長 韓啓司
大腸菌に「ベロ毒素」が移入 多い6〜9月、抵抗力つけること/ニンニク、トウガラシ 最適の朝鮮料理 Q 梅雨入りの知らせが続々届いています。この季節になると食中毒が心配になりますが。 A 1年中で食中毒が一番起きやすいのが6〜9月です。なぜこの時期に多いか。それは気温と関係します。食中毒は基本的には細菌によるものですから、菌量が増えると起きやすい。その増える時期が、湿度や温度の高くなる6〜9月というわけです。 Q 食中毒にはどんなものがありますか。 A 体内に入る前から強い毒素を作っている菌を直接摂り込むことで起こる「毒素型」、食べた時は何でもないが、腸など体内で菌が増殖して毒素を生み出す「感染型」の2つのタイプがあります。 最初のタイプでは、例えばからし蓮根事件で有名なボツリヌス菌が挙げられます。菌が大量の毒素を作り、体内に入るとすぐに発症しますが、衛生事情がよくなった最近では少なくなったと言われます。「感染型」で、いま最も有名なのが、1996年に岡山県や大阪の堺市などで大量に発生した病原性大腸菌O157です。 Q O157について詳しく聞かせてください。 A 正確には腸管出血性大腸菌と言います。これが体内で増殖し、「ベロ毒素」という猛毒を出します。この毒素が血液中の赤血球を破壊するため、大量のヘモグロビンが腎臓にたまって尿毒症を引き起こし、生命を脅かすわけです。 大腸菌はもともと人間の腸内に住みついており、それほど毒性の強いものではありません。ところが、現代人は清潔さを追求するあまり、殺菌、滅菌、消毒などの方法で菌を殺そうとしている。殺されたくない大腸菌が、より強い菌へと変身したのがO157なのです。 その際、大腸菌が持っていなかった「ベロ毒素」を作る遺伝子が摂り込まれてしまったのですが、これが赤痢菌やチフス菌など猛毒の菌が持っている遺伝子だったため、恐ろしい姿に変身したわけです。 同じ地球にあっても、日本や米国、イギリスなどではO157について大騒ぎしていますが、インドや東南アジアなどでは問題にならない。大腸菌よりもっと重い、チフス菌、コレラ菌などがたくさんあるからです。そんな中で暮らしているから自然に抵抗力ができているのです。 96年にO157が発生した際、まず子供やお年寄りに感染しました。しかし、中には感染しない子もいました。それは抵抗力が備わっていたからだと考えられます。だが一般的には、菌に感染すれば食中毒になると勘違いされていました。 Q 食中毒になるかどうかは、抵抗力があるか否かの問題というわけですね。 A そうです。O157は牛の腸の中に繁殖していると言われます。だとすれば、牛を使った料理が多い朝鮮料理を食べた人間はみんなO157に感染するのか。答えは「ノー」です。なぜかと言えば、朝鮮料理ではニンニクやトウガラシをふんだんに使うからです。 例えば、レバ刺しはニンニクのタレで食べます。ニンニクの臭いの元となるアリシンという成分には、ペニシリンに匹敵する殺菌力があるのです。だから、レバ刺しのタレに使うことで、食中毒の予防に役立っています。また、トウガラシには腸の免疫力を高める効果があります。 朝鮮料理を食べている人にはO157の発病者はなかった、というのが私の持論です。 |