12月に性奴隷制裁く「法延」/VAWW−NET代表が訪朝

生涯の恨(ハン)、晴らして!
被害者、時間ないと涙の訴え


専門家と協議、聞き取りも


 今年の12月に東京で日本軍性奴隷制(従軍慰安婦)を裁く「2000年女性国際戦犯法廷」の開催を準備しているVAWW―NET Japan(バウネットジャパン=「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク、松井やより代表)のメンバーらが、同法廷に参加する被害者や専門家との打ち合わせのため、1日から5日にかけて朝鮮を訪問した。

                                                                            李さん家族と平壌を訪問した一行

上海の国際シンポでも意見交換

 訪朝したのは、松井代表、西野瑠美子副代表ら5人で、朝鮮の「従軍慰安婦・太平洋被害者補償対策委員会」(従太委)の招待だった。

 一行は、「法廷」で「検事」になる鄭南用氏(法学博士・国際法学者)や従太委の洪善玉委員長、朴明玉副委員長、黄虎男書記長らと「法廷」憲章や起訴状に関する打ち合わせを行った。

 朴副委員長や黄書記長は、3月末から4月初めにかけて上海で開かれた慰安婦問題に関する国際シンポジウムや「法廷」の実行委員会でも、日本のNGOと意見交換を行っていた。一行は、上海での決定事項や審議内容が従太委のメンバーに詳細に報告されていたことを知り、「『法廷』に対する意気込みと積極的な姿勢が伺えた」という。

被害者、一同に集まるチャンス

 「法廷」でネックになるのは、「原告」になる被害者の証言だが、被害者が次々と亡くなる状況は朝鮮とて例外ではなかった。

 上海のシンポジウムで従太委は、朝鮮に218人の性奴隷制被害者が存在するとの報告書を発表したが、報告書で公開証言をしている43人のうち、半数以上の被害者がすでに亡くなっていた。

 証言に応じたのは、黄海南道碧城郡に住む李桂月さん(79歳)と南浦市在住の朴永深さん(78歳)。現地では、証言が可能な被害者を探すのに一苦労だったという。


 李さんは、腰が曲がって歩くのも大変だったが、当時の様子についてはしっかりした口調で話したという。16歳の時に「いい仕事がある」と騙され、中国の満州に連行された李さんの腕には、今も抵抗した時に軍刀で切りつけられた傷が残っていた。

                                        家族に支えられながら歩く李桂月さん

 

 

 南京、シンガポール、ビルマ(現在のミャンマー)で過酷な日々を過ごした朴さんは、証言を終えた後松井さんらを抱き締め、「生涯の恨(ハン)が晴れるよう助けて欲しい。皆さんに辛い話をしたのは、期待を持ったからだ」と涙を流した。

17歳の時に連行され、中国、シンガポールなど転々とした朴永深さん

 「被害者の話を聞けるのも、あと2、3年。今年の『法廷』が限界」と話す松井代表は、「法廷」に一人でも多くの被害者が参加し、痛みを分かち合ってくれれば、と語る。アジア各国から多くの被害者が来日するには、莫大な資金が必要なため、現在、バウネットでは、2000万円を目標に募金活動を進めている。

 特に南朝鮮からは被害者20人を含む150人の参加が決まっているだけに、「北側から多くの女性が参加できれば」と期待を膨らませていた。 (張慧純記者、写真はバウネット提供)

女性国際軍事法定
個人と国家の戦争責任裁く/日本と南北のNGO、国際諮問委

 今年の12月(8〜10日)に東京で開かれる「女性国際戦犯法廷」は、日本軍性奴隷制(「従軍慰安婦」)など、第2次大戦中の戦時性暴力の真相を究明し、日本の加害責任を明らかにすることが目的。

 戦争犯罪には時効がないというのが国際社会の考え方だが、日本政府が責任を放棄しているため、民間法廷を開催することになった。主催は、日本と南北朝鮮など被害国のNGO、11ヵ国の専門家による国際諮問委員会の3者で構成された国際実行委員会。

 「法廷」では、「従軍慰安婦」などの戦争犯罪について、軍人や官僚などの個人の刑事責任と国家の戦争責任を裁く。被害者の証言や証拠資料をもとに法律専門家が「裁判官」、「検事」となって実例を審理し、国際法に基づいた判決を得、日本政府に戦争責任をとらせる手がかりとする。

 バウネットが行っている募金の郵便振替口座 00120―3―31955(VAWW―NET Japan) ※「法廷基金」と明記を。

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