在日同胞へのカード取り引き停止をめぐって
アメックス問題、私はこう思う
(写真のカードは宣伝用のものです)
正常な契約の白紙は非常識/尹永浩青商会中央副会長
今回のアメックスの問題は、発生した当初からKYC(在日本朝鮮人青年商工会)のメーリングリストを通じ、瞬時に多くの会員達に知れ渡り、物議を醸した。 世界的企業であるアメックスが、正常な手続きを経て締結された契約を「国籍」を理由に白紙に戻そうとする非常識な行動が、私を含めた青商会会員たちの憤激と、権利擁護意識を呼び起こした。 結果的にアメックスが認識を改め、被害者の沈氏に対して謝罪し、カードの現状回復をしたことは一定の成果だと思う。だが、今回アメックスが謝罪するに至った根拠が、外国人登録上の「朝鮮」表示記載者と朝鮮民主主義人民共和国(以下共和国)国籍取得者とは、「違う」という判断にあったという点では、これから日本でどのように権利を主張していくべきかなど、重要な課題も投げかけたように思う。 私個人としては、今回の問題を通して、成果として上げられる点はあったと思う。この問題が発生した当時、一個人の問題として片付けられがちな問題を、だめなら仕方がないというふうに妥協せず、青商会のネットを通じて「全体」の問題としてとらえ、素早い対応ができたことだ。それから議論の過程で、私を含めた多くの青商会会員達が「自分たちの権利は自分たちで守るべきだ」という認識を改めて確認したことだ。 今後は、私たちの世代がそうしたスタンスに立って、本当の意味での権利を守っていくために頑張って行かなければと思う。 事実関係の把握が大事/白吉雲司法書士 今回の事件で言うならば、まずは事実関係を正確に把握し、分析することだ。 カード会員が、共和国国籍所持者であるから、共和国に対する米国の経済制裁措置に違反するので、米国籍の会社としてやむなくアメックスカードの利用を停止するとの措置を受けたとのことであれば、(1)そもそも米国の共和国に対する経済制裁処置とはどのようなものか、を正確に知る必要がある。そしてさらに(2)カード会社の今回の措置は「米国財務省の省令(米国の共和国に対する経済制裁措置)に照らしてみて妥当なものなのか、を具体的に調査すべきだ。 なぜならば、現場サイドにおいては法令や省令、通達などの「解釈」や「適用」の誤りは、これまでもしばしば見受けられるからだ。 次に、日本国憲法および日本国内法に照らしてみて今回の措置が適法、適切なのかを調査する。 アメックスカードの利用を停止するとの措置を受けた同胞は、朝鮮籍を持つ、入管特例法による「特別永住者」というきわめて安定した在留資格を有して日本国内に住む在日朝鮮人であり、カード会社は日本における外国会社として日本国内に営業所を設け、その旨の登記もしている、日本において取り引きを継続して行っている米国籍の会社と思われる。ならば日本国憲法および日本の国内法の適用を当然に受けるはずだ。 よって、カード会社の今回の措置が「日本国憲法及び日本国内法」に違反しないか、妥当なのかを具体的に調査したうえで、それに違反したり、妥当でなければ、カード会社に対し是正を求めるべきだ(場合によっては損害賠償請求なども考えられる)。 そして、上記(1)および(2)によっても問題が解決できない場合は、最終的には、「朝・米政府間対話交渉」に委ねられると思う。 共和国国籍者は、共和国社会主義憲法第15条及び第62条2項、そして共和国改正国籍法第3条により、共和国の海外公民として共和国政府の外交的保護を受けている。 日本において堂々と権利を主張していくべきだ。 差別問題の根本内容解決を/任京河朝鮮大学校経営学部講師 今回の問題は、アメックスの共和国に対する敵対姿勢と収益追求との相矛盾する態度が伺われて、経営のずさんさが露呈されたように思われます。 私自身、アメックス側の謝罪内容を新聞報道で知って、今一つしっくりといかない部分があります。 朝日新聞の報道によると、朝鮮籍を共和国国籍と誤認したため、アメックスが回復措置を講じたとありましたが、仮に純粋な共和国国籍者であるとするならば、アメックスが経済制裁措置を適用したとあるのは、やむを得ないことで、今回のような撤回措置はとられたかどうか、という点です。 確かに、外登上の国籍欄の「朝鮮」表示は、共和国国籍を意味しませんが、これは、在日朝鮮人に共和国公民ないし国籍者が存在しないということとは意味が違います。 もし、アメックスに対して共和国国籍を主張し、例えば総聯中央発行の共和国旅券などを提示した場合には、同社が入会を拒否するとすれば、差別問題の根本的な解消にはならないと思います。 私個人としては、共和国公民を自認し、そのうえで生活し経済活動をすることはまったく当然の権利だと考えますし、共和国国籍を理由とする差別があればそれをなくしていくべきだと考えます。 外登上の「朝鮮」表示の者のなかで、共和国の国籍を欲しない人が、いることも事実です。また、歴史的経緯に鑑みて、それら同胞が存在して不思議ではないし、それぞれの考えや思いが尊重されても良いと思います。ただ、一方では自らを共和国国籍者、公民であると自認しつつも、他方では、「『朝鮮籍』 は国籍ではない」とする法務省の差別行政に甘んじて、それを隠そうとすることは、差別の根本解決につながらないと考えます。 |