そこが知りたいQ&A

入管管理基本計画が改定されたが
外国人受け入れ拡大へ


「国際化」「少子・高齢化」に揺らぐ政策
外登法・入管法、一方では締め付けも

  法務省が改定した入国管理基本計画とは。

A  出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)の第61条9「法務大臣は、出入国の公正な管理を図るため、外国人の入国及び在留の管理に関する施策の基本となるべき計画を定めるものとする」に従い、関係省庁との協議のもとで作成されます。内容は (1)入国・在留する外国人の状況 (2)外国人の入国・在留の管理の指針 (3)その他の施策等――と定められており、日本政府の外国人政策の重要な指針となります。

 同条項は、入管法が1989年に改定された際に加わったもので、92年に第1次基本計画が策定されました。そして今回、8年ぶりに見直された第2次基本計画が、3月23日に公表されました。

  第2次計画の特徴は。

A  「国際化」と「少子・高齢化」が進む日本社会の状況を踏まえ、より積極的な外国人受け入れへ向かう姿勢を示したことです。「これまでよりもさらに積極的に、社会のニーズに応じた、あるいは今後のわが国の国際的な発展に寄与する、外国人の円滑な受け入れを行っていく必要が一層高まっていくと見られる」と明記しています。

 これまで認めていなかった単純労働者の受け入れ解禁、つまり移民政策へと転換するものではないとしながらも、専門的・技術的労働と単純労働の間に存在する熟練労働の分野に、「技能実習生」として外国人を受け入れる職種を増やす方向を打ち出しています。また、単純労働とみなされている介護分野での受け入れも、ニーズの高まりが予想されることから検討を進めるとしています。こうした方向に基づき、在留資格の拡大や基準緩和などが行われていくものと見られます。

  「特別永住者」である私たち多くの在日同胞をはじめ、「永住者」や「定住者」など、長く日本に暮らす外国人については。

  計画は、日本社会と深い関わりを持ち定住化する外国人の増加に触れながら、「日本人と外国人が円滑に共存・共生している社会づくりに努めていく必要がある」と強調し、「わが国社会の不可欠な一員となる外国人がより安定した地位を持ってわが国に滞在できるよう、『永住者』あるいは『定住者』の在留資格の運用について検討していく」「さらに今後は、居住者そして社会の構成員としての外国人に対して、個々の行政分野の断片的な関与ではない総合的な外国人行政を構築していく必要がある」などと指摘しています。

  どう見たらいいのですか。

A  さきに触れた部分から、一見、外国人に優しい政策を取っていくように見えますが、そう単純ではありません。新規外国人受け入れと在留外国人定着の円滑化を主張する一方で、とくに非正規入国・滞在者に対しては、より厳しく対処していく強い姿勢を打ち出しています。

 こうした姿勢を裏づけるのが、昨年行われた外国人登録法(以下、外登法)と入管法の改定です(施行はそれぞれ今年4月と2月)。この2法は、日本政府が外国人を管理、取り締まるための言わば「2点セット」の法律です。

 外登法改定では、永住者と特別永住者以外に残されていた指紋押捺の廃止を筆頭にいくつかの面で規制を緩和する措置が取られましたが、登録証の常時携帯・提示義務、それに違反した際の刑罰制度は残ったままです(特別永住者の常時携帯義務違反の場合のみ行政罰に軽減)。つまり、外国人を監視対象として動向をつねに掌握し、その人権を威嚇、弾圧、規制するための法律である本質に変わりありません。一方、不法在留罪の新設や再入国禁止期間の伸張など、入管法は明らかに「オーバーステイ(超過滞在者)対策」の重罰化・規制強化の方向で改定されました。

 この2法を抱き合わせて運用すれば、管理する側にとって最大の効力を発揮するという基本的な構造は温存されています。むしろ、新規外国人の取り締まりについては念には念を入れる形で強化されました。

  計画と法改定の方向が矛盾している感じがします。日本政府は外国人政策をどうしていこうとしているのでしょうか。

  在日同胞など古くから在住する外国人を意図的に見て見ぬふりし、「同化」と「排除」で一貫していた日本の外国人政策が、外国人(外国人登録者約150万人、オーバーステイ約27万人)の増加と多様化、新規外国人の定住化を前に、見直しを迫られているのは事実です。限定的ながらその必要性を確認したのが今回の基本計画の特徴ですが、現在は、従来どおり外国人に厳しい「管理・追放」の政策を守ろうとする勢力と、外国人に優しい「処遇緩和・受容」の政策への転換を志向する勢力がせめぎあう過渡期だと言えるのではないでしょうか。

 小渕首相の諮問機関である「21世紀日本の構想」懇談会は1月に提出した報告書で、「移民政策」の必要性について強調しました。こうした提言は各所から出ています。また先日は、オーバーステイ外国人に法相が特例として認めることのできる「在留特別許可」の基準が事実上緩和されるなど、行政的な運用面で若干の変化も出てきています。進行に拍車のかかる「少子・高齢化」の波は、「優しい政策」側を勢いづかせているようです。

 しかし、この発想の要因となっているのはあくまでも労働力不足、つまり日本経済の安定であって、外国人の人権尊重ではありません。「利益になる外国人は受け入れるが、利益にならない外国人は排除する」という「同化」と「排除」の基本姿勢自体は今も変わっていないと言えるでしょう。 (韓東賢記者)

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