夢、民族広がった!

新世代が見た米国
東京朝高舞踊部、在米同胞との出会い


「ハンギョレ」(1つの民族)を体で
ことば、踊り…「ストレートに伝わり嬉しかった」

 【ロサンゼルス発金志永記者】 東京から飛び立ち、太平洋を越えた朝高生たち。生徒たちは初めて訪れた米国で、自分の生きる世界の広さを実体験の中で学んだ。東京朝鮮中高級学校舞踊部は、3月20日から約1週間米国を訪問。ニューヨークとロサンゼルスで公演を行い、在米同胞社会で大きな反響を呼んだ。「今まで体験したことのない感動のステージでした」。生徒たちはもう1つの異国の地で、自分たちに向けられた拍手を全身で受け止めていた。

観客との一体感

 南朝鮮から米国に移住した在米同胞の社会にも世代交代の波が押し寄せている。幼い頃に移住した1.5世や米国で生まれ育った2世の中には朝鮮語を満足に話せないケースが多い。

 朝高生は、在米同胞の前で「チャンゴの舞い」や「農楽舞」などの民族舞踊を披露した。公演の司会も朝鮮語と英語の両方で行った。民族の誇りを受け継いだ在日3、4世の公演は、在米同胞にとって「衝撃的な事件」(「ニューヨーク公演歓迎委員会」関係者)であった。

 「自分達の言葉や踊りが在米同胞にストレートに伝わったことが何よりも嬉しかった」

 ステージに立った生徒たちは観客との一体感を感じていた。

 英語しか話せない若い在米同胞も拍手を送っていた。「ハンギョレ、一つの民族」。その言葉に込められた深い意味を、生徒らは教室の外で実感したのだ。

ルーツを知ること

 「大学生たちが皆、世界の中で自分のすべきことを考え、学んでいる。スケールの大きさが印象的です」。公演の合間に訪れたコロンビア大学で、一人の朝高生が感想を話していた。

 肌の色が違う大学生が図書館で肩を並べている。コリアンの学生もいる。日本では見ることがなかった光景だ。

 朝鮮人と日本人。これまではその「二分法」の世界に生きていた。「朝鮮人」の前に必ず「在日」という言葉をつける生活に慣れてきた。

 米国では、日本での狭い常識は通用しない。ロサンゼルス公演を主幹したカルフォルニア・テクニカルカレッジを訪れた時は、コンピューター関係のライセンス取得を目指す若者たちの話を聞き、人種の違いに関係なく、実力で自分の道を切り開こうとするアメリカ社会の気風を感じ取った。

 他民族国家米国での1週間は、朝高生にとって「新しい発見」の連続だった。初めて触れる世界――。しかし、生徒たちは少しも怖じ気付くことなく、積極的に参加した。

 在米同胞もそんな朝高生たちにエールを送った。「皆さんのように自分のルーツを知る人間こそが、様々な国と民族で構成される広い世界で一番早く成功する人間だということを知ってほしい」(UCLA民族音楽学部キム・ドンソク教授)。

グローバルな視点で

 ニューヨークとロサンゼルスでの公演では、日本で民族教育を受け、今はアメリカで生活する「朝高OB,OG」たちも姿を見せた。

 「時代は変わった」。後輩たちの姿を見て彼らは言った。「私たちの頃は考えられなかった出来事。でもこれからはきっと民族教育を受けた子どもたちの活躍の場がもっと広がっていくだろう」。

 ニューヨークには同胞によって運営される「民族芸術学校」がある。民族楽器は揃ったが、舞踊の講師がいない。その話を聞いて朝高在学中に平壌の音楽舞踊大学で通信教育を受けたある朝高生が言った。

 「夢はウリハッキョで朝鮮舞踊を教えること。春からは朝鮮大学校で学びます。夏にはニューヨークで舞踊を教えることも出来ると思う」

 生徒たちは、「民族」をグローバルな視点で捉える感覚をしなやかに身に付けていた。

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