1日から施行・地方分権一括法

自治体ー財政難反映、住民負担増も
「地域と自分、見直し必要」


独自発揮に感心

 地方分権一括法(分権法)が4月1日から施行され、日本の地方自治に新しい局面が訪れた。国からの財源委譲が不十分なことなど、分権はまだ過渡的な段階ではあるが、自治体の今後の出方に対する注目は確実に高まっている。現状と展望を概観する。

 

 ここ最近で地方分権への注目をがぜん高めた出来事と言えば、東京都の外形課税導入と、中部電力が三重県知事の見解を受けて、原発建設を断念したことだ。 今年度から施行となる都の外形課税は、都内に本支店を構える資金量5兆円以上の大手金融機関を対象に、最終的な利益ではなく、事業活動に伴う利益全体(業務荒利益)に課税する。多額の公的資金の投入を受けながら、不良債券処理で赤字を計上している銀行に税逃れを許さず、行政サービスの対価を回収しようというものだ。

 一方、三重県の芦浜原発計画は地元住民の反対を受けて、36年間にわたりこう着状態にあった。北川正恭知事は2月22日の県議会で、「推進は現状では困難」「白紙に戻すべきだ」と述べ、計画撤回を決定づけた。

 今後、毎年7000億円を上回る財源不足が予想されている都は、自治省や財界と火花を散らしながら導入した新税で、1100億円(見込み)の税収を得る。三重県での動きは、国策と住民自治に関する重要な問題提起だ。

 いずれも分権法施行を受けたものではなく、従来の枠組みのなかでの動きだ。それだけに、分権法施行を前にして、「自治体がここまでできるのか」とのインパクトを、世間に与えたのは疑いない。

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 権限も財源もないなかでは、独自施策など無理――自治体行政が国主導で全国一律に統制されていた状況下では、こうぼやく自治体が多かったらしいが、分権法施行と東京や三重での動きがあいまって、独自色追求の雰囲気がにわかに醸成されてきた。

 日本経済新聞社が先月、全国の都道府県と市(区)の首長を対象に行った調査では、独自施策を導入するために条例の新設や改正を「すでに検討」「今後検討」と答えた首長が7割を超えた。施策の対象分野としては、「環境・ごみ」が58%で最も多かった。

 また、新税導入への関心も強い。自治体が独自に導入できる税金としては、以前から「法定外普通税」があったが、分権法ではこれが国の許可制から事前協議制になった。同じ事前協議制のもので、使途を特定する「法定外目的税」も新設された。調査では、61人の首長が目的税の導入を、50人が普通税の導入を「検討する」と答えた。

 自治体の厳しい財政事情を反映し、中長期的にも、住民の負担を引き上げるとの考えを示した首長は4割近くに及んだ。

 分権法は自治体の独自色の発揮を促すものだけに、負担やサービスの形にも、地域住民や行政の問題意識が反映されることになる。

 都議会で新税導入をめぐり、「バブルを助長した大手銀行から税金を取るのは当然」との感情論まで飛び出したのは示唆的だ。

 東京の杉並区では3年ほど前、住民団体主導で区内にあるパチンコ台1台につき年間10〜30万円を課税しようという動きがあったらしいが、今後はそうした税源探しが活発化する可能性もある。分権が進むなかで、まずは地域と自分との関係を、見直す必要性が強まりそうだ。

国の関与弱める

 分権法の柱は、機関委任事務の廃止と地方自治に対する国の関与の見直しだ。

 機関委任事務とは、法令に基づいて自治体が国の「下請け」として処理してきた事務のこと。社会福祉施設の設置や飲食店営業の許可などもこれに当たり、都道府県では事務全体の約8割、市町村でも4割を占めた。

 また、これまで中央省庁は「指導」「通達」などの形で自治体行政に口出しして来たが、今後は法律に基づかなくては関与できなくなった。

 ただし分権法にも、形を変えて国の関与は続くという懸念や、政策実行に必要な実質的な権限委譲が少ない、税財源も委譲されていないなどの問題が残る。

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