ソクタム―ことわざ辞典

婚姻の飾りをするよりも運命の飾りをすべきだ


 「ホニンチレ マゴ パチャチレ ハレッタ(婚姻の飾りをするよりも、運命の飾りをすべきだ)」

 たとえ、豪華な挙式と贈物をあげることができなくとも、幸せに暮らすことができればよいという意味である。

 また、何事も真心を込めて行えば成し得ないことはないという意から広くつかわれる「チョンソンイ チグカミョン トエド コチ ピンダ(真心が極に至れば石の上にも花が咲く)」がある。愛においても、互いに全身全霊を傾注して情熱と誠意をそそげば、気持ちは通じ合うのである。

 昔話「りんごのおくりもの」は、女性のそんな愛に対する息づかいを描いたものだ。

                                                                  

 むかしあるところに、なしの花のように美しく、みつばちのようによく働くプニィという女性がいた。

 ある日、3人の若者がプニィの前に現れた。1人はとなり村の金持ちの地主。1人は町の大金持ち。もう1人は、百姓のトセであった。

 トセ以外の2人は、プニィに「草取り、稲刈りをしなくてもよい、洗濯、ぬい物などをしなくてもよい」「毎日ごちそうを食べて、きぬのきものに、さんごのかんざし。何でも買ってあげるよ」と言った。

 一方、トセはこう言った。

 「おいらはびんぼうだ。あるものは丈夫な体と真心だけ」

 誰を選べばいいものかと悩んだ結果、プニィは3人に「きょうから1ヵ月の間に私に贈物を下さい。一番素晴らしい物を下さった方の所へお嫁に行きます」と話した。

 地主はふしぎな鏡を、大金持ちは1日に千里を走る馬を用意した。トセは、ほうぼう歩き回って、大きな木のかげでひとやすみした際に見つけた、うまそうなりんごを用意した。しかし、3人が行ってみるとプニィは病気で死にそうになっていた。

 その時、トルセがりんごのつゆをしぼり、彼女の口を開けて流しこんだ。すると、プニィがぱっちりと目をあけて、起き上がった。地主と大金持ちは、彼女に「りんごのおかげでいきかえったんだよ」と言った。

 彼女はしばらく考えて「私はトセのお嫁さんになります」と言った。こうして、なにもないトルセだけど、プニィは彼と力を合わせ、汗を流して働いて、幸せな家庭をきずいたのであった。

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