そこが知りたいQ&A
NY朝米会談の結果は
軽水炉遅延の損失、米が認む
高位級会談への地ならしに重点
Q 8日から15日までニューヨークで開かれていた朝米会談について、一部では「決裂」したとの報道もあるが、実際のところはどうなのか。
A 決裂していない。朝鮮外務省スポークスマンは18日、朝鮮中央通信社との会見で、「朝米間の懸案問題を論議するため多岐にわたる会談を今後も続けることに合意した」と述べている。
また、米国務省のウェンディー・シャーマン諮問官は16日、米下院国際関係委の聴聞会で、「今回の会談を決裂や失敗と見なしていない。今回の会談は、たいへん困難で、長い時間がかかるだろうし、持続的に行われる協商の一部分だと見る」と証言している。
Q それではニューヨーク会談で具体的な進展はあったのか。
A 米国が2003年まで提供することになっている軽水炉の建設問題で、工事の遅延による朝鮮側の電力損失と、それに対する補償要求の妥当性を認めたこと。これは一歩前進だと評価できる。
周知のように94年に締結された朝米基本合意文では、米国が朝鮮に2基の軽水炉を2003年までに提供すると約束した。しかし、米国が朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)を構成するのに時間がかかったりで、着工そのものが遅れ、2003年の完成は物理的に困難になった。
基本合意文では2003年までの代替エネルギー(重油)を米国が責任を持って供給するとなっているが、それ以降については一切、触れていない。つまり軽水炉建設の遅延によって、2003年以降の代替エネルギー供給問題が新たに浮上し、それを今回、米国が認めたわけだ。
ただ、代替エネルギーを誰が供給するのかについては、決まっていない。朝鮮外務省スポークスマンの会見では、米国は朝鮮側の要求の妥当性を認め、双方がその実現方途について討議した、となっている。
Q その他の問題で進展はあったのか。
A シャーマン諮問官は、21日の米上院外交委聴聞会で、「ミサイルプログラムに対するわれわれの憂慮に関する会談を再開し、核合意(基本合意文)の履行に関する新しい協商をはじめることで合意した」と述べている。
新しい協商が何を意味するかは不明だが、ミサイル問題で朝鮮側は、米国との協議が継続している間、ミサイル発射実験を一時、留保すると昨年9月に発表している。
ちなみに朝鮮は、ミサイルの開発、配備については自衛権に属する問題なので米国の脅威が存在する限り交渉の余地はないが、輸出については、補償があれば検討すると表明しており、一方の米国はミサイルの開発、配備そのものを段階的に中断させようとしている。ミサイル会談ではこうした問題が協議されるだろう。
また金倉里の地下施設に対する米国の再調査も、今回の会談で合意している。同地下施設については今年5月に米調査団が再訪することで昨年、合意していた。
Q ニューヨーク朝米会談では当初、ワシントンでの高位級会談の日程やメンバーなど実務問題が協議されると言われていたが。
A 高位級会談開催問題も話し合われたと思われるが、日程やメンバーなど具体的に決まったものはない。
Q それではニューヨーク会談ではいったい、何が話し合われたのか。
A 報道を総合すると、朝鮮を米国の「テロ支援国」名簿から除外する問題や前述の代替エネルギー、ミサイル問題と朝米基本合意文の履行問題などが話し合われたようだ。
順序に関係なく挙げると朝米間には現在、朝米停戦協定の処理、経済制裁解除、核拡散防止、ミサイル開発、米軍兵士の遺骨返還、人道的食糧支援などの懸案事項がある。
ワシントン朝米高位級会談に先だってこうした問題をある程度、片づけようというのが、ニューヨーク会談の目的だ。換言すると、双方の懸案問題のある程度の解決が、高位級会談の前提条件だと言える。今回の会談で具体的な日程、メンバーが決まらなかったのは、まだその水準に至っていないことを物語っている。
かと言って朝米高位級会談の見通しがないのではない。双方とも高位級会談の重要性を認識しているからこそ、より慎重になっていると言える。
同時に、クリントン政権にしてみれば、大統領選挙で民主党のゴア候補に有利な形で朝米関係を進めたいという考えがある。当初、4月上旬にも開かれていると言われていたワシントン朝米会談が延びているのは、その辺の事情も影響しているのではないか。