私の会った人

山田太一さん


 テレビ、映画、小説、舞台で、現代に生きる人間の背負っている課題を独特な着眼で描き出す。

 代表作「岸辺のアルバム」「ふぞろいの林檎たち」などの作品には、何気ない日常の中に浮かび上がる時代の断面が刻印されている。その鋭い時代認識と深い人間観とが醸し出す世界は、人々の心をひきつけて止まない。

 自分の力の及ばないできごとに深い想像力を働かせることが、今の社会では難しくなっていると語る。

 「このごろのテレビドラマの中には、人間をリアルに捉らえようとする気持を捨てたからこそ成り立っているようなものがあります。次々に何かが起きる。ゲームのように刺激的だ。しかし、そこで人間がどういう気持ちになり、どう傷をひきずるか、などということには、ほとんど関心がない」

 しかしこういうドラマになぜか人気が集まる現実。「人間とは何かをじっくり考えなくてもすんでしまう。日々せわしく過ごしているためでしょうか」。

 背景には経済大国・日本の姿が透けて見える。日常的に他人の痛みを慮る、想像力を培うことに心していかなければと話す。

 「過去をいいことも悪いことも含めて率直にふり返ることができないでいる。島国だからみんなで首をひっこめていると、何とかなるだろうという感覚が他人事ではなくあると思います。明白に他人を傷つけても責任をとろうとしないことで、日本人の誇りも傷ついています」。 (粉)

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