「ベルリン宣言」、「太陽政策」批判がわし?
新味なく、発表時期に注目
言行一致が当局会談の鍵
金大中「大統領」は10日、外遊先のベルリンで
(1)南北当局間の直接対話と協力 (2)朝鮮半島の冷戦終息と平和定着
(3)離散家族問題の解決 (4)南北特使交換を骨子とする「ベルリン宣言」(別項)を発表した。これに対して北側は15日付の労働新聞論評(別項)で言葉よりも実践が重要だと強調した。金「大統領」の真意および南北対話の行方は、まだ不透明だが、4月13日の南朝鮮総選挙後になんらかの動きがあると思われる。
「空言」と一蹴
労働新聞が強調している実践というのは昨年2月、朝鮮政府、政党、団体連合会議が南朝鮮当局に対して求めた先行実践事項――(1)外勢との共助破棄および合同軍事演習の中止
(2)「国家保安法」の撤廃B統一愛国団体と人士の活動の自由保障のことだ。
これについて南朝鮮当局が明確な行動をとった形跡はない。金「大統領」は、保安法の改廃を表明しているものの、議会の反対を理由に実践には移しておらず、また与党民主党も今回の選挙で保安法改廃を公約に掲げていない。
南朝鮮で「大統領」は、絶大な権限を持っており、たとえ議会が反対しても「大統領緊急命令」(憲法76条)などで保安法の効力を停止させることができるという指摘がある。
また、保安法が廃止されれば、同法によって「利敵団体」に規定されている祖国統一汎民族連合(汎民連)南側本部や「韓国大学総学生会連合」(韓総連)など統一愛国団体の活動も少しは自由になり、それは北側が求めている第3の要件を満たすことになる。
一方では廃止する権限があるにもかかわらず法律で北を「敵」と規定し、もう一方では、その「敵」と和解と協力を進めるというのでは、つじつまが合わない。労働新聞が「ベルリン宣言」を空言だと一蹴しているのは、そのためだ。
牛500頭の北送不許可
「ベルリン宣言」には、これといって新しい内容は含まれていない。したがって金「大統領」がどうしてこの時期に、しかもドイツで発表したのかということに関心が集まっている。
まず考えられるのは、選挙対策。金大中「政権」がその間、推進してきた「太陽政策」について、一向に成果が上がっていないという非難をかわす目的があると思われる。
実際に南朝鮮の国策研究機関である統一研究院のある研究員は、最近発表した「南朝鮮社会の冷戦克服方案」で相互主義に基づいた「太陽政策」無用論をぶち上げているし、民間の現代経済研究所の研究員は「北朝鮮変化論から平和共存論へ」と題する論文で、「太陽政策」が南北関係改善においてなんらの効果ももたらさないと指摘している。
もう1つは、民間による南北経済協力の拡大。金剛山観光事業のほかに現代グループは大規模な軽工業団地の造成を進めているし、三星グループは、電子工業団地を建設する計画を持っている。今年2月には南の全国漁民総連合会が北と民間の漁業協力を行うことで合意した。
これらの南北民間経済協力は、いずれも北のペースで行われており、このままでは主導権を握れないという焦りを南側は持っている。だから「ベルリン宣言」発表後、南朝鮮当局は現代グループが申請していた牛500頭の北送を不許可にした。
具体的動きは選挙後
かといって、南北当局間対話の可能性がないわけではない。
金日成主席は、71年8月6日に行った演説で当時、南朝鮮与党の民主共和党と接触する用意があると表明し、それが72年の7・4南北共同声明発表の端緒になった。
また金泳三も「大統領」に就任していた95年3月にベルリンで無条件で穀物を提供する用意を表明し、同年6月には北京で次官級会談が開かれて15万トンのコメ無償供与で双方が合意した経緯がある。
いずれにしても今回の「ベルリン宣言」に関する具体的な動きは、総選挙後になるだろうし、その成果は南側の行動いかんにかかっていると言える。 (元英哲記者)
「ベルリン宣言」(要旨)
第1に、北が経済的困難を克服できるよう手助けする準備がある。政経分離による南北民間経済協力が進められているが、本格的な経済協力を実現するためには、道路、港湾、鉄道、電力、通信など社会間接資本が拡充されねばならない。また当局による投資保障協定と二重課税防止協定など投資の環境造成が必要だ。北の食糧難は単純な食糧支援だけで解決できず、肥料、農機具改良、関係施設改善など根本的な農業構造改革は、民間経済協力方式では限界がある。これからは政府当局間の協力が必要な時である。北から要請があれば、これを積極的に検討する準備がある。
第2に、現段階でわれわれの当面目標は、統一よりも平和定着である。したがってわが政府は、和解と協力の精神で力が及ぶ限り、北を手助けしていく。
第3に、北は何よりも人道的次元の離散家族問題解決に応じるべきだ。
第4に、これらすべての問題を効果的に解決するため、南北当局間の対話が必要だ。2年前、南北基本合意書の履行のために特使交換を提議した。朝鮮半島問題は、究極的に南北当局者だけが解決できると確信し、今後もこれらの政策を誠意と忍耐心を持って一貫して推進していく。
労働新聞論評(要旨)
南朝鮮執権者が最近、ドイツのベルリン自由大学で演説を行い、北南関係と関連した「ベルリン宣言」を発表した。「宣言」には共和国をひどく刺激する単語が並び、「閉鎖」だの「孤立」「野望」だのという極めて侮辱的な言葉が盛り込まれている。
民族的尊厳の見地からすると、南朝鮮執権者の言動は正しいとは言えない。
いわゆる「宣言」というものも、その内容を見ると目新しいものがなく昨年、北京での北南次官級接触で双方が論議した問題を繰り返したに過ぎない。
北南間の対話と協議を通じて統一問題を平和的に解決しようとすることは、われわれの一貫した立場である。
われわれは、南朝鮮当局が全民族の期待に応えて反民族的で反統一的な古い対決政策から抜け出し、実際の行動で肯定的な変化を見せるなら、彼らと民族の運命について虚心坦懐(きょしんたんかい)に協議するし、統一のために共に努力するということを明らかにしている。
われわれのこのような原則的立場に符合するなら、いつでも北南当局間の対話と接触が実現するだろう。
100の言葉よりも1つの実践がより重要である。
南朝鮮当局が真に北南間の和解と協力を望むならば、実践行動でその意志を示すべきである。(15日付)