取材ノート
セーフティネット
今回、導入された定期借家制度は、米国、英国などの契約社会では一般的で今後、日本の借家市場もグローバルスタンダード(国際標準)に対応していくために必要だと、推進する側は説明する。
だが、家主側が契約を解除できると聞いて、そうでなくても部屋探しに苦心している在日同胞に、不安を抱かせたのではないかと思える。
実際、都内で部屋を探すために不動産屋を訪ねた時、初めは承諾しておきながら、朝鮮人だと分かると、次の日に借り手がついたと冷たくあしらわれた経験がある。今度は、住宅を確保した後も、さらに不安を抱えて暮らさなければならないのかと考えてしまう。
露骨に朝鮮人だから、という理由でなら、何らかの措置を講ずることもできようが、明らかにそうでありながら、他の理由を付けて断られた場合は対処のしようがない。
貸してくれる所をひたすら探し続けるしかない、ということになる。
果たして今回、制度を導入する際、導入する側にそういう部分に対する配慮があったのか、どうか。
確かに新制度によって更新という形が変われば、意味不明の更新料というのがなくなるし、良質の住宅も出回り、借家市場の活性化というメリットもあろう。
だが、一昨年5月に組織された定期借家推進協議会のメンバーは、建築業協会、ビルヂング協会の会長など、そうそうたる肩書きを持つ。結局、貸す側の人たちで研究は進められてきた。
社会は、色々な人で構成されている。そのうえで、新制度の導入によって、新たな歪みを生まないよう、今後もセーフティネット(弱者保護)に努める必要があろう。 (金美嶺記者)