わがまち・ウリトンネ(55)
千葉・習志野(4)
労働者の街、自然なつながりを大切に/「1世くさい」トンネに誇り
「習志野は『1世くさい』トンネと良く言われるんです。文字どおりまだ多くの1世が健在していることもありますが、1世から2世、そして3、4世へとトンネの伝統が受け継がれていることが大きいと思います。私自身は『1世くさい』と言われることに、とても誇りを感じます」
在日2世の金成洙さん(51)はこう話す。トンネの歴史については文献など何もないが、1世から2世、2世から3世といった感じで、語り伝えられてきた。その結果、子供たちも1世のハラボジたちを尊敬し、大切にする風潮が自然に形成されてきた。
金さんは千葉県茂原市生まれ。父を早く亡くし、母1人の手で育てられた。東京・江戸川にいた時に妻の洪貞妃さん(49)と知り合い、結婚。その後、洪さんの地元である習志野トンネに引っ越してきた。ここに住んでもう25年になる。
「習志野トンネは労働者が多いのが特徴で、それぞれの生活レベルも似通っています」。それが「1世くさい」と形容される独特の文化を作っている1つの要因ではないか、と金さんは話す。
「私たち2世はアボジたちから多くの影響を受けています。そのせいか、負けず嫌いの人が少なくありません」
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トンネでは、1月の新年会に始まり、ボーリング、ゴルフ、花見、8月の祖国解放を祝う集い、12月の忘年会まで、何かしら地域同胞が集まるイベントが組まれている。忘年会には100人ほど、花見には80〜90人ほどが集まる。
昨年はみんなで1泊旅行にも出かけた。冠婚葬祭の時にも、トンネの人同士、顔を合わせることも少なくない。
日頃から同胞同士のコミュニケーションを大事にしているためか、何かイベントがあれば、すぐにみなが集まる。
「例えば、今日電話して、『暇だったら食事にでもいかないか』と言える関係を大切にしている。同じ民族、同胞として、互いに日常のことなど色々と話し合える気楽な関係がいい」と金さん。それが自然な形でのつながりだと語る。
「イベントはあくまで手段であって目的ではない。みんなが自然に集まれる場所があればいいわけです」
昔は土取り場や前原というトンネがあったので、嫌でも毎日のように顔を合わせていた。そういった意味では、今のように同胞が離れて暮らす状況では、会う機会を設けるのもなかなかむずかしい。だからこそ、「自然に集まれる場所」が大切になってくる。それもひとつのトンネの形である。
(この項おわり=文聖姫記者)