ソクタム―ことわざ辞典

ウソついて頬を打たれるよりはましだ


 「ウソついて頬を打たれるよりはましだ

 事実は事実として率直に打ち明け、事実を曲げてウソをついてはいけないことを言う。 類句として、「稲妻で雉(きじ)を焼いて食べる」というのがある。つまり、次々とたやすくウソをつくことの例えである。次のような民話が伝えられている。

 昔、1人の宰相がいた。ウソつきで有名なこの宰相がある日、「私の気にいるようなウソを2ついえる者に、わたしの独り娘を嫁にやる」といいだしたので、朝鮮八道のウソつきどもが、ワンサとあつまってきた。

 そして、その者たちはいろいろと、とんでもないウソを並べたてたが、いざその段になると、宰相は「ウーム、それは本当だ」といって、なかなか娘を嫁にやろうとはしなかった。

 そこへある日、1人の若者がやってきて「やがて暑い夏が来るでしょう。いまのうちに、都の大通りのところどころに深い穴をほり、その中へこの冷たい風を入れておき、夏になってそれをとり出して売ると、大金持ちになりますよ」といった。

 宰相は、いつものように面白そうに腹をゆすって「これは素晴らしい。そして次は何だ?」とせきたてた。

 若者はうす気味悪い笑顔を浮かべながらすかさず、腰の巾着から古証文を1枚とりだして、宰相の前に広げながら「これは、あなたさまのおじいさまが亡くなる前に、私の家から借りた10万両の証文です。これを返して下さい」といった。

 宰相は、困ってしまった。なぜなら、これをウソだといえば、娘を嫁にやらねばならず、本当だといえば大金を、彼に払わねばならなかったからだ。その結果、宰相は娘を若者にとつがせることになってしまった。

 この民話は、ウソつきでけちで、不正な者が最後には失敗し、罰を受けることを揶揄(やゆ)している。

 各国にも、「ウソ」に関したことわざは多い。例えば中国の「ペテン師の家が焼けても誰も信じない」は、いつもウソをついている者が火事だから助けてくれといっても誰も信用しないことを示したものだ。

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 今号から民族の知恵のエッセンスを網羅したソ(俗談=ことわざ)を紹介していきます。

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