現場からの意見(上)
崔雅絹 ハーモニー共和相談指導員
介護保険−保険料
無年金者に重い負担
在日高齢入所者の74%が該当者
サービスと引き替えに
介護保険は無料ではない。その費用は、利用者の負担を除いた分の半分を税金で、残りの半分を保険料で負担する形になる。
保険料の支払いは、40歳から64歳までの第2号被保険者は、医療保険に上積み納付し、そして65歳以上の第1号被保険者は、年金からの天引きによって徴収される。
制度の実施によって在日高齢者、そしてその家族の負担はどのようになるのだろうか。
当施設の入所者は、6割が在日高齢者で、そのほとんどが無年金者である。
昨年11月に施設内で統計を取ったところ、在日高齢者135人中、無年金者が100人(74%)、年金受給者が35人(26%)であった。
日本人の場合は、入所者111人中、87%にあたる97人が年金受給者だった。
無年金者に対して多くの地方自治体では、救済措置として給付金制度を設けている。大阪市の場合、在日外国人給付金として、月に1万円を支給しているが、その範囲では生活を支えるほどのものにならないことは分かると思う。
無年金者の生活を支える経済的基盤は弱い。そのうえに今回の介護保険料の負担が重くのしかかってくる。
介護保険制度は、無年金者がほとんどを占める在日高齢者にとって、その社会福祉サービス利用と引き替えに、大きな負担を強いられることになる。
軽減どころか逆に増える
具体例を見てみる。現在、通所サービス(以下デイケア)の利用を中止しているAさん(78歳・女性)は、長男夫婦と同居していた。
以前から老人性うつ病によって精神状態が不安定で、長男の嫁が当施設に相談にこられた。
夫の仕事は、不況の影響で、あったりなかったりの状態で、経済的負担などを考慮して短期間の入所サービスになった。
初回の利用時は、うつなどによって他の利用者とは交わらず部屋に閉じこもりがちで、居室ではベッドに寝ていることが多く(身体的状態は自立)、「息子に殺される」など意味不明な言葉を発することがあった。
それが、何度かのショートステイを利用する間に状態は落ち着き、以前とは見違えるほどになった。
やはり経済的負担が大きく、また状態的に落ち着いており在宅でも可能と判断、家に戻ることになった。
在宅に戻ると、再びひきこもりがちになるのではとの心配から、デイケアの利用を勧めた。
本人も毎回楽しみにし、状態も落ち着いていたが、やはり経済的問題によって、デイケアの利用を中止せざるを得なくなった。
Aさんは無年金者で、大阪市の在日外国人給付金を受給しているが、生活を支えるのが先であった。
在宅でサービスを利用しながら生活していこうとするAさんとその家族は、介護保険制度の導入によって、負担が軽減され、再利用出来るのではないかとの期待を持っていたが、現実は逆だった。
保険料の徴収によって、その負担は軽減どころか今後ますます増えることになる。