みんなで作った晴れ舞台
神奈川初級・付属幼稚園、芸術発表会の舞台裏


マイク、照明もまかせて! 成功のカギは6年生

 朝鮮学校はいま、文化祭の真っ盛り。文化祭は、子どもたちにとって「晴れ舞台」、年に1度のビックイベントだ。しかし、準備はたいへん。教員の数が限られる朝鮮学校では、子供たちは裏方も務める。神奈川朝鮮初中高級学校では20日、同校の初級部児童と幼稚園児による芸術発表会が行われ、民族色豊かな舞台が繰り広げられた。「みんなの舞台」を作り上げる児童たちの1日を追った。

「成長の空間」

 この日は朝からあいにくの雨。大道具の運搬も雨に濡れながらの作業になった。

 会場になる体育館の舞台では、マイク担当の文友紀さん(初6)と趙里愛さん(初5)が最終チェックをしていた。マイクの数は全部で7つ。2日前のリハーサルでは、コードの長さを間違えたため、進行に支障があった。舞台の裾に張り付けた手順を確認しながら、繰り返し繰り返し練習を重ねる。「本番での失敗は許されない…」。緊張で表情は張り詰めている。

 2階では、照明担当の丁龍珠くんと金秀勇くん(初6)が舞台にライトを当てていた。「4年生の演劇『フンブとノルブ』(朝鮮の昔話)はライトだけで照明をカバーしなくちゃならない。緊張するなぁ」。

 幕が開き、低学年の合唱が始まる。舞台上の階段の裏ではジャージ姿の6年生10人が待機。歌が終わるや一斉に階段を運ぶ。合間を縫っては雨に濡れた大道具を拭く。まさに「縁の下の力持ち」だ。

 舞踊部の2人は1年生の着替えを手伝いに、3階の教室へダッシュ。「オンニ、オンニ」と次々と寄ってくる。てきぱきとした作業が安心感を与えるのか、1年生は出番の緊張を忘れてはしゃぎまわっていた。

 発表会で成功の鍵をにぎるのは6年生。大道具を運んだり、幼稚園児の面倒を見るなど進行全般を担当する。裏方を担う彼らの頑張りようが、公演の成功を左右するのだ。

 「先輩たちのように頑張らなきゃ」(金誠友くん、初6)と力がこもる訳だ。

 「発表会では状況を瞬時に判断し、実践する能力が問われる。こういう体験は教室の中ではできませんよ」(同校の音楽講師を務める崔玉姫教員、41)

「一生の思い出」

 発表会の「とり」をとるのも6年生。「最後を華々しく飾ってあげよう」と担任の朴美香教員(26)が選んだ農楽が披露される。

 軽快な音楽が流れ、男子12人が舞台に登場するや、頭にかぶったサンモ(ひものついたかぶりもの)を一斉に回す。最後まで誰一人失敗せず、みごとに回しきった。会場からは拍手喝さいと歓声が飛ぶ。2階で音響を担当していた朴先生は、力を出しきった児童たちの姿に「涙が止まらなかった」。

 そして最後はみんなで記念撮影。発表会を成功させた満足感で、表情はほくほくだ。アボジやオモニらが駆け寄ると、その表情が一層ほころんだ。

 「みんなで成功させた思い出を一生のものにして欲しい」(朴先生)。最後の「舞台」は、みんなの表情とともに、子どもたちの心に深く刻まれた。
(文―張慧純、写真―李鉉民記者)