朝大研究院 福祉講演会
豊かな心で障害克服を
福祉教育アドバイザー、障害者の妹尾氏が講演
朝鮮大学校(東京都小平市)で18日、群馬県立身体障害者リハビリテーションセンター職員で福祉教育アドバイザーの妹尾信孝さんによる「心豊かに生きる―人として、人間として」と題する講演会が、同校研究院の主催で催され、研究生や学生ら約50人が参加した。自らも四肢と言語に障害を持つ妹尾さんの「共に生きる心、豊かな心を持った人間であってほしい」というメッセージは、同胞社会の未来を担う若者たちに大きな感動を与えた。
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自身の生い立ちを語った妹尾さんは、障害を持って生まれたからこそ厳しく育ててくれた母親や、特別視せず接してくれた友達との触れ合いをエピソードとして語り、障害者への偏見や差別、心の壁を、周囲の人たちとの絆を育みながら乗り越えてきたと強調した。
そして、日本における障害者福祉の現状について、「福祉に必要なのは思いやりと助け合い。日本ではボランティア活動が盛んで、設備も制度も整っているが、残念ながら『心』が伴っていない」と語った。
講演ではまた、自身の障害観についても語り、「障害は1つの『特性』。不幸ではなく不便なだけであり、前向きな心と創意工夫でちっとも苦にならなくなるものです」と指摘。すべての人が共に生きる、真のノーマライゼーションを実現したいと強調した。
さらに、将来を悲観して自殺する若者の増加について妹尾さんは、人と人との触れ合いの大切さを強調。「人は必ず、その人なりの役割と使命、人と社会に貢献できる何かを持っている。いてもいなくても良い人などいない。1度きりの人生を悔いのないように送ってほしい」と語った。
この日、朝大では試験の真っ最中にもかかわらず、多くの学生が参加。熱心にメモを取る姿が目に付いた。初めて朝大を訪れた妹尾さんも「一言も聞きもらすまいという真しな姿勢はすばらしい。逆にこっちが緊張した」と苦笑していた。
一方、学生たちが講演後につづった感想文は、用紙1枚にびっしり。
「生活で不便を感じながらも悲観せずプラス思考で生きる姿に、学ぶべきことがたくさんあった」「五体満足に産んでくれた両親に感謝し、体が許す限りの努力で精一杯、生きていきたい」「一緒に楽しい社会、差別も何もない平和な社会を作っていきましょう」…。障害者への誤解と偏見があったわが身を振り返り、「心を豊かに」という妹尾さんの思いに共感する姿勢が、言葉の節々から感じ取れた。(柳成根記者)