2000年-業界を展望
消 費 者 金 融
規制強化、中小に試練
「大手ひとり勝ち」色濃く
上場大手(武富士、アコム、プロミス、アイフル、三洋信販)および中堅(シンキ、ニッシン、クレディア)8社の中からは、99年3月決算で過去最高益を更新した企業も出ており、「不況に強い」と言われる業界のイメージは、いっそう強まっている(注1)。
無人店舗や自動契約機の大量導入による利便性の向上とともに、超低金利による資金調達コストの低下が、追い風になっているようだ。
無人化戦略
ただ、大手と中堅の業況を比べると、いくつかの相違点が見られる。
第1に、営業貸付において大手は前期比14%の高い伸びを見せているが、中堅は4.5%にとどまっている。
第2に、営業貸付金の内訳において、大手は口数および一口当たりの金額が同時に伸びているのに対し、中堅は口数の減少を金額の拡大でやっと補っている状態にある。
そして第3に、年間の貸倒れ償却が大手は2.2〜2.7%という比較的低い水準で推移しているが、中堅は2.3から4.6%へと上昇しており、不良債券の増加による償却負担が大手よりも大きい。
以上のように中堅が押され気味なのは、まず、大手が無人店舗を武器に全国的な店舗展開を進めることによって、中堅の営業地盤である地方マーケットが浸食されていることが要因として考えられる。
また、貸倒れが発生する比率の開きは、大手がリスク管理システムの構築や与信回収ノウハウの蓄積に莫大な資金を当てていることの反映と言える。
市場成熟へ
主な利用者層である20代の人口が減少していること、無人店舗や自動契約機の大量投入で潜在的な顧客層の掘り起こしが一段落したことを考えると、3、4年後にはこの業界も成熟期を迎え、成長が鈍ると予想される。
これを踏まえ、企業も多様な戦略を展開している。
例えば、年利18〜23%の優遇金利の新設や貸出上限額の引き上げ(200万円)など、貸付け条件の変更による優良顧客を積極的に確保したり、投資効率の高い「ロードサイド無人型店」の積極的な展開や有人店舗の無人化による店舗網拡充を図ると言った具合だ。中には、個人向け無担保ローンへの事業特化で効率を追求したり、反対に不動産事業への進出や企業対象業務、電子商取引など、事業の幅を広げているものもある。
ただし短期的には、コンビニエンスストアのam/pmジャパンや日本生命と提携して市場参入の準備を進めているさくら銀行をはじめ、新たな競争相手の出現や、最近の「商工ローン問題」に端を発する規制強化(注2)の動向などが焦点になるだろう。
(注1)
東京商工リサーチがまとめた98年度(98年4月期〜99年3月期)の高額所得法人ランキングで、大手5社はすべて100位以内に入った。8位の武富士(前年9位)を筆頭に、19位のアコム(同29位)、26位のプロミス(同40位)、39位のアイフル(同54位)、95位の三洋信販(同102位)と、軒並み実績を上げている。ちなみに銀行で100位以内に入ったのは7行で、証券会社は1つも入っていない。
(注2)
6月1日から施行される改正出資法では、貸出しの上限金利が従来の40.004%から29.2%に引き下げられる。大手は現行の金利のままでクリアできるが、30〜40%に設定している中小業者への影響は大きい。(商工連「新春経済講演資料」を要約、注は編集部・おわり)