2000年-業界を展望/製造業
期待薄な内需回、高精度の独自技術が武器に
日本経済新聞社が集計した全国上場企業の99年3月期決算結果を見ると、製造業(1093社)は、売上高が前期に比べ6.8%減少しており、経常利益も同32%減った。
しかし同社は同時に、2000年3月期の決算では、売上高が0.9%増、経常利益が23.5%増と、3期ぶりのプラスを予想している。
経常利益に比べて売上高が伸びないことの背景には、雇用不安の影響で個人消費の回復が鈍いのとともに、企業の設備投資意欲が低水準にあることなど、内需の回復力の弱さがある(注1)。
主要業種の売上高予測を見ても、製品価格が回復している石油部門では30%近い成長が予想されるものの、鉄鋼、自動車などでは売上減少が避けられず、そのほかの業界でも減少かせいぜい現状維持といったところだ。
リストラ効果
一方で経常利益のアップが見込まれるのは、リストラによるコスト削減効果によるところが大きい。鉄鋼業界では、売上高は前年比で約4%の減少が予想されるが、経常損益を見ると前期の400億円近い赤字から約800億円の黒字に転じると見込まれる。
とくに、電機業界は前期比54%増という大幅な増益が予想される。けん引しているのは、デジタル家電や携帯電話用の半導体や電子部品だ。
中でも半導体の回復は、製造装置部門にも波及するものであることから、この分野に対する期待は大きいものがある。
ただし、機械部門など内需関連の業種では、今後も減益が続くと予想されている。
廃業増加
大企業の業績の揺れに、下請けの中小企業は大きな影響を受けざるを得ない。
1970年代には約1万を数えた東京都大田区の工場は、98年には約6000に減っている。それらのうちには倒産ばかりでなく、将来の展望を見出せずに自主廃業したものも少なくないと言われる。
背景にあるものとして、景気の低迷に加え、後継者難や熟練技術の継承難、現行の貸し出し抑制などが指摘されている(注2)。
今後、競争力アップを図るうえでキーワードになるのは、ブランド力、アイデア、開発力、生活スタイル提案力などだ。
経済不安の中でも成長を続けている中小企業には、クリエイティブな技術力を持つものが多い。
情報化社会への移行が進むなかで、精密部品に対する需要は伸びる。高精度で独自性のある技術を持つことこそが、中小企業にとって最も協力な武器になるだろう。
(注1)
経済企画庁が7日に発表した99年10ー12月期の法人企業動向調査によると、設備投資額の実績見込みは前期比2.7%増と2期ぶりのプラスとなった。同庁で
は2000年度前半にも底を打ち回復に向かうとしている。
(注2)
中小零細の事業所が集中する大田区、東大阪市が95年にそれぞれまとめた報告書によると、規模の小さい事業所ほど転・廃業の傾向が強い。東大阪市では1〜3人規模の事業所の4分の1が、大田区では従業員9人以下の事業所の約14%が、製造業からの転・廃業を考えているという。
(商工連「新春経済講演資料」を要約、注は編集部)