2000年-業界を展望/建設業
落ち込み続く公共投資


環境関連など新局面も

規模縮小

 建設業は、投資額がGDPの15%以上、就業者数が全産業の約10%を占める巨大産業だ。

 しかし、現在は縮小の道を辿っており、96年度に82兆7000億円だった投資額は、99年度には71兆5000億円。98年度には倒産が13年振りに5000件を超え、全産業における倒産件数の28.4%を占めた。

 このように、建設業界は縮小局面に入ったが、これは今後も続くとの見方が支配的だ。

 その根拠の1つに、日本の国と地方自治体の財政難による、公共投資の落ち込みがある。

 公共投資は99年度で、建設投資全体の49%を占める。

 しかし、国債と地方債を合わせた発行残高は約540兆円に達しており、いかに経済を下支えすると言っても、これ以上赤字を膨らませてまで、建設投資に財政を振り向けられるものではない。不況続きで税収もしぼんでいるとあって、出口が見えないのが現状だ。

脱高コスト

 さらに、規制緩和の問題がある。

 現在、建設業界の公共投資システムは、自由競争を抑制する高コストシステムになっている。その基本をなすのが、中小企業を保護する「官公需法」だ。中小企業に対する事業発注を義務付けた目標比率と、請け負い業者のランク付を行う「経営審査事項」がその代表的なシステムだ。

 これに基づいて、公共事業を中小企業に分割・配分するために、非効率に陥らざるを得なくなっている。

 因みに、公共投資は国の直轄事業が1割、国からのひもつき財源に基づいて地方が実施する補助事業が4割、地方単独事業が5割を占る。すなわち、9割までが地方型の投資になる。

 すでに述べたとおり、地方自治体の財政は火の車であり、これまでのシステムを維持することは困難だ。

 高コスト体質から脱却するための規制緩和は、必須のものとして提起され、自由競争による投資額の低減に向かうはずだ。

情報化へ

 だが今後を展望すると、新たな躍進の機会も多くなる。

 1つは、PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ=注1)――民間資本を活用した社会資本整備に対する研究が進められていることがある。

 また、環境問題に対する社会的な関心の高まりも、一般・産業廃棄物の処理およびリサイクル施設へのニーズにつながる。

 一方、建設業もこれからは、「良いものを安く」がテーマだ。業界内では今後5年以内に、品質保証の国際規格ISO9000シリーズの取得や、建設CALS/EC(注2)といった一般競争入札システムへの対応が本格化しそうだ。これらの影響は大企業ばかりでなく、下請け業者にも波及する。

 以上のような新潮流にいち早く乗ることが、生き残りの条件になると言える。

 (注1) 社会資本の整備や公共サービスの運営を、民間の資金と経営ノウハウに依拠して行う行政手法。コスト削減やリスクの民間への移転、支出に対する価値の増大が理念。

 (注2) 公共事業の調達をオンライン化するもの。電子入札など、公共事業の執行にかかる申請・届け出のすべてを電子情報化し、事業に関する情報を統合データベース化する。建設省では、2004年の完全導入を見込む。

(商工連「新春経済講演資料」を要約、注は編集部)