それぞれの四季/金栄子
一人暮らしの不安


 最近の統計によれば、平均世帯規模が減り、独居世帯は上昇している。子供の数が減り、高齢化が進む傾向を端的に表しているようだ。

 同胞社会でも2世代、3世代同居の話はあまり聞かなくなった。当然、老人の1人暮らしも多い。

 生活文化を身につけた女性ならまだしも男性が80歳を過ぎても1人という状況を聞くと、「大丈夫かいな」と心配になる。食事のことを聞くと、女性でも食堂やスーパーのお惣菜で済ませてしまっている。

 救急病院で当直中、高齢の1人暮らしのお年寄りが救急搬送されてくるのに立ち会う機会がある。急変の中、不安と苦痛でタオル1本持たず、着替えの下着さえ持たない人もいる。

 落ち着いた頃、つい一言いってしまう。「救急車で来る時は入院になってもいいように最小限のものを紙袋に入れてすぐ持って出られる用意を普段からしておいてネ。他人がタンスを開けて探すのは大変だから、いつもちゃんと準備しとかなあかんで」と。

 かかりつけの病院でも空きがなかったり、普通の医院は夜間は受け付けない。搬送される病院は、思いのほか遠方になる時がある。これからも1人暮らしは増えていくだろう。知恵を出しあって、同じ境遇同士、仲良くし、いざとなったら互いに助け合って、不自由さを補わなければと思う。

 同胞も同じ思いだろう。4月から介護保険が導入されるが、何が何やら分からないことが多い。年金のない1世同胞をどう守るか、自分たちの通る道でもあり、親身になって総聯支部などと知恵を出し合い、老いの身支度を考えてみたい。(看護婦)