春夏秋冬
オモニが生前、孫の面倒を見るために、わが家に来たときのことである。お風呂に入った後、どうも髪の毛がパサパサすると言うので、風呂場をのぞくと、シャンプーと並んで食器洗い用の洗剤が置いてあった。1世のオモニは、日本語が読めなかった
▼介護保険が4月から開始されることもあって世の中、「介護サービスブーム」である。が、介護する側の一方的な「サービス」ばかりが目について、肝心の介護される側の気持ちは、まったく無視されているのではないだろうか。とくに同胞高齢者の
▼まず問題になるのが、サービスを受ける手続きのわずらわしさ。外国人登録証の切替でさえ、1人で行うことが不便なのに、オモニのように日本語を読めない1世が、果たして介護サービスを受ける申請書を書けるだろうか。「要介護認定」とか難解な単語も多い
▼経済的な理由もある。同胞高齢者のほとんどは、年金をもらっていないし、生活保護を受けている人もいる。保険額は老齢年金受給者で1万5000円程度と言われているが、収入のない老人にとっては、大金である。それに、1人暮らしの同胞ほどプライドが高いので、生活保護を受けていることを知られたくないだろう
▼「お前たちに面倒をみてもらうつもりは、さらさらない」というのが、年老いたオモニの口癖だった。その通り、子どもたちに一切、面倒を見させることなくあの世へ旅立っていった
▼言葉も地理も分からない国にやってきて、子どもを立派に育て上げ、生き抜いてきたからこそ言えることだ。その1世に、いつになると恩返しできるのだろうか。 (元)