生活安定に大きく貢献

同胞生活相談綜合センター 142ヵ所開設


 在日同胞の生活と権利を守る地域の拠点を目指して、今年3月から各地に設立された同胞生活相談綜合センターの数は、12月7日現在、全国で142ヵ所(地方5、本部31、地域106)にも及んでいる。センターには、設立から11月末までに、冠婚葬祭、財産管理、海外渡航、医療、保険・年金、就職問題など1万608件もの相談が寄せられ、そのうち、60%がセンター独自のネットワークで解決された。相談の比率は総聯傘下の同胞は、9727件、総聯以外の民団、どちらも属さない同胞、帰化した同胞たちが、1881件で、6人に1人が総聯以外の同胞たちの相談という統計が出ている。各地のセンターでは、今後も所長を中心に、相談員らが一丸となって活動の窓口を広げ、さらに同胞の生活安定と権利擁護に貢献できるよう、地域の特徴を生かしたシステム作りに努力している。

地域のコミュニティの場に/介護保険で素早い対応
都内の各センター

 同胞生活相談綜合センターを全国に開設する問題は、今年3月1日から5月31日まで行われた総聯による「生活奉仕、相互扶助活動を立派に行い、総聯結成45周年を全同胞で輝かしく迎えるための運動」の一環として進められた。

 そして、全国的な開設に先立ってまず、東京7つの支部(江戸川、中杉、足立、新宿、荒川、板橋、大田)でモデルケースとしてセンターが設立された。

 7つの支部に設立されたセンターでは、各支部の委員長が所長となり、支部活動家や商工会役員のほか、弁護士、司法書士、税理士、社会保険労務士、介護士、一級建築士など同胞有資格者81人と、177人の専門相談員で網羅された。

 結果、支部活動の幅と力量が大きく広がった。

 足立と大田の専門相談員となった河正潤司法書士は、「こうした運動は総聯だからできること。同胞の生活サポートへと総聯が意欲的になったことで、今後さらに多くの同胞が支部に訪ねて来られるようになったと思う。どんな小さな相談でも誠心誠意応じていくことが大事だ」と語る。

 各センターでは開設後、講習会を開き、相談の日を設けるなど、独自の取り組みを行っている。

 新宿センターでも定期的に「相談の日」を設けてきたが、相談にあたってきた高英毅弁護士は「今年はそれといって複雑な相談はなかった。でも、これから日本の経済状況と相まって厳しい問題が出てくる可能性は大きい。だからこそ、日ごろからセンターを訪ねてくる同胞たちの信頼を得ていく作業が重要だ」と語る。

 江戸川、中央江東センターでは、デイハウス「うりまだん」をセンター協力のもとで運営し、同胞高齢者のコミュニティの場としての役割を果たしてきた。

 とくに今年は、4月から介護保険制度がスタートしたが、各センターでいち早く対応した結果、683の自治体で保険制度を受けられない一部の同胞高齢者のための保険料の救済措置などが実施され、11の自治体で老齢福祉年金の実施と給付金の拡充が行われた。

同胞の声 情報誌に掲載/行政にも影響
生野南センター

 大阪市生野区田島にある生野南同胞生活相談綜合センターは、2500戸、約1万1000人の同胞を対象に活動をしてきた。

 生野南支部ではすでに、99年7月から無料法律相談センターを旗揚げしており、今の綜合センターの原型を築き、同胞から一定の評価を受けてきた。

 だが、同支部の邵哲珍副委員長は「これからがたいへんだ。何か起きた時、頼られるのか、実際、助けられるかなど、色々なことが問われてくる」と言う。

 生野南センターでは、法律相談を開くことはもちろん、相談員と共に定例会や、2ヵ月に1回をめどに講習会を開き、その内容と同胞の声、地域で起きたことの逐一を同センター発行の情報誌「ヨボセヨ」に載せてきた。

 こうした活動は、区行政にも影響を及ぼし、10月には、生野区長が在日朝鮮人の現状を知りたいとセンターを訪れた。そして、役所からは行政に生かしたいと「ヨボセヨ」の定期購読を申し入れてきた。

 今後は、支部が位置する大池橋を同胞の「名所」にするため、年に1回センターが主催する「同胞祭り」を実施したいと、抱負は広がる。「子供を産んだら、育てるのは当然のことだ。センターをどう育てていくか、同胞と共に考えていきたい」と邵副委員長。

 同胞による同胞のための拠点として、各センターへの組織的な取り組みに同胞の期待は大きい。(金美嶺記者)

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