互いを知る「心の窓に」

コラム「私の会った人」を終えて


 約1年3ヵ月にわたって連載してきましたコラム「私の会った人」をひとまず、終わります。約60回にわたり日本各界の人々を紹介しました。多くの人たちの朝鮮を語る熱い思いが伝わったでしょうか。人と人を結ぶのはいつの時代にあっても、友情や信義だと思います。私たちもまた隣人との理解を深めながら、新世紀を迎えましょう。

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 出会った日のことを懐かしく思い出す。コラム「私が会った人」のシリーズで紹介した多くの人が今年亡くなった。三浦綾子、黒田清、丸木俊、中村百合子、宇都宮徳馬の各氏ら…。素晴らしい仕事をなしとげ、人々の胸に鮮烈な記憶を残して去っていった。

  その中でも忘れられないのはジャーナリストの黒田清さんのこと。最初の出会いは、読売新聞を退社して、黒田ジャーナルを創刊したばかりの頃だった。12年前の8月。大阪、気温は33度。その日、奈良の取材先から大阪の黒田さんの事務所に着いたのは、約束時間の直前だった。全身から汗が吹き出す。そんな私に黒田さんは「まあ、冷たい麦茶でも一杯どうぞ」とさりげない気配り。

 思えば、この出会いが初めの1歩だった。それから黒田さんを通じて色々な人との出会いが生まれた。チマ・チョゴリ事件が頻発した時には、在京のジャーナリスト五十人ほどを緊急に集めて、この事件について話す機会を設けてくれた。あの時の怒りの激しさと素早い行動力。記者はただ書くのだけではなく、周囲を動かし、社会を変革する力を持たねばと思い知らされた。

  東京、大阪を往復しながらの激務とストレス。そんな黒田さんに病魔は容赦なかった。肝臓ガンに冒されていたのだ。大手術に耐え、1年後に復帰した。その直後には、東京で開かれた「従軍慰安婦」問題の国際シンポジウムのパネラーとして参加してもらった。ふっくらとした体型は細くなったが、柔和な面立ちはそのまま。戦争法案の新ガイドラインを非難しながら、「新たな戦争をしかけようとする勢力と闘わずして平和を獲得することはできない」と変わらぬ力強い口調だった。

  しかし、3年後の今年夏、黒田さんは帰らぬ人になった。葬儀には黒田さんがいつも気にかけていた「弱者」や「差別されている」人々が、流れる涙も拭かずに焼香の列を作っていた。人は一生の間にこんなにも多くの人を励まし、慕われるのかと私はその時、実感したのだった。

 振り返れば、様々な人たちと出会った。在日同胞に、良質な日本人の朝鮮への思いを伝えることができただろうか。コラムを通して互いを理解する「心の窓」の役割を担えるようにと願った。「心の窓」が開いてこそ、お互いの姿を正しくとらえることができる。そんな日朝の架け橋になれれば、このシリーズの果たした役割も小さくなかったかも知れない。ご愛読ありがとうございました。(朴日粉記者)

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道浦母都子さん  
  「両親の朝鮮民族への親しみを心に感じて大きくなった。後に社会に関心を向けていく下地にもなったと思う」(エッセイスト・歌人)

多田富雄さん

 「朝鮮の恨というのは、日本語の恨みといったものではない。哀しみも恨みも含み、さらにそれを越えた深い心の動き、人間の根源的な情念とでも言うのだろうか」(免疫学者)

高橋哲哉さん

 「明治の時代に征韓論が台頭して、日清戦争、朝鮮併合、中国侵略と行き着いた。その歴史を繰り返さないためにも、朝鮮との国交正常化を成し遂げるべきだ」(東大助教授)

三國連太郎さん
 「朝鮮女性を『慰安所』に押し込めた。日常の風景だった。今、日本の政治家のトップの人たちは僕の世代の人たちです。知らなかったはずは絶対ありません」 (映画俳優)

江上波夫さん

 「高句麗は、騎馬民族が作ったものですから、僕は親近感をずっと持っている。歴史的な英雄が、強大な国家を築いた」(歴史学者)

喜納昌吉さん

 「アリランは僕の大好きな歌。歌う度に、朝鮮が統一して、みんな幸せになってほしいと思う」(歌手)

石川文洋さん

 「朝鮮は暗い国だと一方的に思っている日本人が多い。日本人の思い込み、偏見、誤ったイメージを正していかねば」(カメラマン)

黒田清さん

 「エセ学者、エセ漫画家、エセ政治家らの主張がアメーバーのように日本の隅々まで浸透している」(ジャーナリスト)

網野善彦さん

 「従軍慰安婦が兵士以下の奴隷的な状態に置かれていたことは疑いない。今頃、『国民的な誇り』といわれたりすると、しゃらくさいという感じを持つ」(歴史学者)

岸恵子さん

 「フランスでは、民族や人種で差別することは、もっとも恥ずべきことです。私パリに住んで一番よかったのは、そのことです」(映画女優)

五木寛之さん

 「金日成主席の死去に慟哭する平壌市民の姿を揶揄する識者らがいたが、私はあのシーンを見て、かえって自然だと思った。…これは歴史的に雅な光景です」(作家)

鵜飼哲さん
 「日本の北朝鮮に対する無知は深刻だ。メディアの北朝鮮バッシングなどは構造的な無知の裏返しである」(一橋大学教授)

佐藤忠男さん

 「どの国の映画にも、民族のプライドが表現されている。何を心のよりどころとし、誇りにして、大事にしているかが描かれている」 (映画評論家)

コシノジュンコさん

 「平壌は質素で余分な色のない美しい都だった。住むためにきちっと心と手がかけられていた」(デザイナー)

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