みんなの健康Q&A
高齢者の健康/前立腺肥大
加齢とともに増える排尿困難
男性に多い症状 我慢せず水分は十分に
兪明徳 共和病院泌尿器科医長
Q 60代の男性ですが、最近オシッコの出が悪いのですが。
A 尿が出にくい原因として、ぼうこうの収縮力、いわゆる尿を出す力に原因がある場合と尿道、すなわちオシッコの通り道に原因がある場合が考えられます。糖尿病や脳脊髄疾患、風邪薬などでぼうこうの圧力が低下する場合と、前立腺肥大症、尿道狭窄といった病気により尿道が狭くなり排尿困難という尿の出が悪くなる状態になるのです。 Q 排尿困難という状態にも色々あると思うのですが、どういった状態が一応の基準ですか。 A 残尿感といって排尿後、尿がまだ残っている感じがしたり、2時間以内にトイレに行くことが多かったり、尿が途中で途切れるといった症状や尿の勢いが弱かったり、排尿時にお腹に力を入れなければ出ない、また就寝中に何回もトイレに起きるような症状などがあります。そういった症状が出始めたら一度泌尿器科を受診してみたらいいでしょう。 Q オシッコする時間が長いのもやはり出にくいからでしょうか。 A そうですね。健康な男性は、ズボンのチャックを下ろして尿が出始めるまでに約5秒、出終わるまでに約25秒、合計約30秒というのが一般的です。40秒以上かかれば何らかの異常があると考えます。 Q 中高年男性がよくかかると言われる前立腺肥大症かもしれないと言う事ですね。では前立腺とはどういったものですか。 A 前立腺は、ぼうこうの出口で尿道をぐるりと取り巻いているクルミ大の臓器で、精液の一部となる前立腺液を分泌しています。50歳を過ぎた頃から、加齢とともに多くの男性で前立腺の肥大が見られるようになります。なお肥大の程度と症状の出始める時期にはそれぞれ個人差があります。 Q 症状が出始めた時にはどういった治療をするのですか。 A 前立腺肥大症の治療は、多くの場合、薬による治療から始められます。前立腺の緊張をゆるめて、排尿状態を良くする薬や、前立腺の腫れや炎症を抑える薬などです。肥大した前立腺を直接小さくする作用のある抗男性ホルモン薬を使用する場合もあります。 前立腺肥大症が進行している場合や、薬を飲んでも効果が不十分な場合などには、外科的治療が行われます。現在は内視鏡を使って尿道から前立腺を削りとる手術が主流です。大きな前立腺の場合、開腹して前立腺を摘出する方法もありますが、最近では少なくなっています。進行度、年齢、体調などによって中間的治療としてマイクロ波で加温する前立腺高温度治療、ラジオ波やレーザーによる組織内凝固療法などもあり、主治医と相談のうえで治療を受けられてはいかがでしょう。 Q 前立腺肥大症の初期ではないかと思われた時に日常生活で注意する事や心がける事はありますか。 A オシッコの出が悪いといって、水分をとるのを制限する方がいますが、これは体に良くありません。水分は十分にとって下さい。ただし、就寝後の排尿回数が多い方は、夕方から夜にかけて水分を控えた方が良いでしょう。 アルコールは尿量を増加したり、ぼうこうにたまった尿を出さなくする作用があるため、飲み過ぎはいけません。 適温のお風呂は前立腺肥大症の不快な症状を改善します。少しぬるめ(40度前後)のお湯にゆっくり入りましょう。 また冬場、下半身が冷えると排尿回数が増えてしまいます。下着の重ね着で保温するように注意して下さい。 排尿は、あまり長時間我慢してはいけません。尿がしたくなったらすぐ排尿するように心がけて下さい。 薬の中で風邪薬、胃腸薬などでは、前立腺肥大症の症状を悪くする薬があります。薬は勝手に服用せず医師に相談してください。 長時間座り続けると、下半身に血液が溜まり前立腺もうっ血します。適度に運動した方が良いでしょう。 いずれにせよ50歳を過ぎた男性で前立腺肥大症に思い当たる症状のある方は薬を飲めば症状が改善することも少なくありません。専門医に受診し適切な指導、治療を受けられる事をお勧めします。 |