私の会った人

吉見義明さん


 旧日本軍による元「従軍慰安婦」を「軍事的性奴隷」として明確に規定し、日本政府に対し、法的責任を取るよう迫ったクマラスワミ報告が96年のジュネーブの国連人権委員会で採択された。吉見義明・中央大教授は政府が国家責任を認めるきっかけとなった証拠を発見したとして知られているが、前年、クマラスワミ報告官から直接意見を求められた学者でもある。

 「勧告を葬りさろうとした日本政府の意図は国際社会で拒絶され、クマラスワミ報告が歓迎されたことは、日本にこの問題の根本的解決を迫っているということである。報告官は、日本に資料の公開、国家賠償、責任者処罰などを求めており、『民間基金』のような小手先の対応では済まされない。日本政府は過去を直視し、法的責任を認め、心から反省し、償うべきであろう」

 吉見さんはこの問題に取り組むきっかけを著書「従軍慰安婦」(岩波新書)の中で語っている。学者の良心が読む者の心を打つ。

 「91年12月、元『従軍慰安婦』金学順さんらが、日本政府の謝罪と補償を求めて東京地裁に提訴する際に、NHKのインタビューに答えて『日本軍に踏みつけられ、一生を惨めに過ごしたことを訴えたかった。日本や韓国の若者たちに、日本が過去にやったことを知ってほしい』と訴えたことに、心を打たれ、『従軍慰安婦』問題の研究を始めた。金学順さんの言葉から、歴史家として私自身果たすべき役目があると感じたからだ」(粉)

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