取材ノート
「焼肉セミナー」にも時代の波
焼肉店を経営する同胞が全国から集まる、恒例の「朝鮮料理(焼肉)店経営集中講座」。4回目の今年は、大阪と東京で2日間ずつ開催という初の試みである。記者も両方に参加した。
4日間で4つのセミナーと試食会、意見交換、パネルディスカッションをこなす過密日程とあって、参加者も初めは戸惑いを隠せない様子だったが、「繁忙時に4日も店を閉めるのだから、1つでも多く技術を覚えて帰らなきゃ」(東京の同胞)と、講座が始まるや真剣なまなざしに変わる。不況の折、外食産業も厳しい風にさらされているとあって、講師の話を一言一句、聞きもらすまいとの気迫が伝わってきた。 今回のキーワードは、食文化が多様化する現代に、朝鮮料理ブームを支える若者のし好にどう対応するか。これは試食店選びにも反映された。まず「敵」を知ろうと、大阪と東京の繁華街にある、いかにも若者向けのたたずまいの店に、70人の集団が足を運んだ。記者も実際に食べてみた。 確かに、昔ながらの味にこだわる同胞の経営スタイルとは一線を画す。単価が安いだけに素材も味もそこそこ、満腹にはなるがずば抜けて美味ではない。キムチも同胞の手作りの味には及ばない。だが、懐の寂しい者にとっては、和牛かどうかは問題ではない。「焼肉を安く食べられる」、この1点で十分なのだ。実に商売が「うまい」。主催者側がこうした店をあえて選んだのも、「激安商法」を一概に否定するだけでなく、顧客のニーズを捉えた「勝ち組」の手法から学べるとの判断からだ。 記者の隣で、ある参加者は「こういう店がうける時代なんだ。同胞も頭を使わないと生き残れないね」と漏らした。試食会は相当、刺激になったようで、自分の店をどうするかで頭が一杯のようだった。(柳成根記者) |