在日本朝鮮人人権協会のカンターレポート(要旨)


 人種差別撤廃条約に基づき提出された日本政府報告書に対する在日本朝鮮人人権協会のカウンターレポートの要旨は次のとおり。

◇                  ◆

脈々と受け継がれる差別と偏見

 日本は1905年「乙巳五条約」(韓国保護条約)により朝鮮の外交権をはく奪して以来、朝鮮国内で絶大な権限を掌握した。

 この1905年条約に対して、国連・国際法委員会は「保護条約の受諾を得るため韓国皇帝およびその閣僚に加えられた強制」(1963年報告書)と明記し、当初から無効の条約とした。すなわち日本による朝鮮植民地統治は無効であるにもかかわらず、日本政府は朝鮮植民地統治は「合法」であり、故に以降の一切の行為も「適法」であるとしている。

 日本は植民地支配と侵略戦争により効果的遂行のため、朝鮮民族に対する蔑視と日本民族の優越性を吹聴し、侵略と支配の合法化をはかった。

 日本は法令により朝鮮語の使用を禁止(1938年第3次改正教育令)し、氏名を日本式に改名(1939年朝鮮総督府政令19号、20号)させるなどの民族抹殺政策を行い、朝鮮人に対する差別と偏見をあおった。その政策が、その後も脈々と受け継がれ、その結果が現在も頻繁に起きている朝鮮学校の女子学生の「チマ・チョゴリ」を刃物で切り裂くなどの暴行事件なのだ。

排外主義の扇動者が公職に

 2000年4月9日、東京都石原慎太郎知事は「不法入国した三国人、外国人が非常に凶悪な犯罪を繰り返している」と発言した。同知事はこれまでも「三国人」、また「北鮮」といった差別用語を何回となく使ってきた。石原知事の発言は日本帝国主義の朝鮮植民地支配時と、解放後朝鮮並びに朝鮮人らに対する差別意識、敵対意識を持つ日本支配層と一部の排外主義者が使った言葉を意図的に使用したものと思われる。

 このような排外主義の扇動が、また彼のような扇動者が公職に居続けること自体が、朝鮮学校生徒・児童らをはじめとする在日朝鮮人、また在日外国人への人権侵害事件につながっていくことは火をみるより明らかだ。

日本人になるなら同じ待遇

 日本政府による制度的差別および差別の放置により今まで多くの朝鮮人が傷つき、さらには殺人事件さえ起きている。日本政府による、差別政策は日本による朝鮮植民地統治被害者が解放後、日本で生まれた子孫に、自己の民族文化を維持継承させる目的で設立された朝鮮学校にもおよんだ。

 現在、日本国内の131校の朝鮮学校(小学校から大学まで)では、約2万人の朝鮮人子弟が学んでいる。

 日本政府の朝鮮学校に対する一貫した対応は、日本学校で日本人になるための教育を受けるならば日本人と同じ待遇を与える、しかし、朝鮮人として民族性を育成するための朝鮮学校に対しては徹底的に差別するというものである。

 これに対して、日本政府は人種差別撤廃委員会に提出した報告書で、「…なお、国内の外国人学校で学ぶ外国人生徒について、大学への進学の道を制度的に開くため、平成11年9月に大学入学資格検定の受験資格の弾力化を計ることとしている。…同様に平成11年8月に大学院入学の弾力化を計ることとしている」と指摘している。

 事実、文部省は1999年7月8日、朝鮮学校など外国人学校の生徒に対し、大学入学資格検定(大検)を受けられるようにすることで、日本の国立大学への受験を認めるとの方針を明らかにした。一歩前進といえるが、朝鮮学校を正規の学校として認めず、同校の卒業生に対し大学受験資格を認めない姿勢にはまったく変化はない。

日本語版TOPページ