関東の在日コリアン遊技業11社が運営
研修センター「P&Mアカデミー関東」
パチンコ店経営 顧客第1主義に転換
全社員をプロに育成
あいさつをする受講生の姿勢を見て、講師の声が飛ぶ。「その程度では、サービス業のプロとはいえません。だから訓練が必要なんです」――今年7月、東京・神田に開講された「P&M(パチンコマネージメント)アカデミー関東」の、新入社員を対象にした「基本接客」講座の光景である。同アカデミーは、関東エリアでパチンコホールを経営する在日コリアン企業共同の研修センターだ。「30兆円から20兆円」(総務庁発表)へと市場規模が縮小傾向にあるパチンコ業界で、「勝ち組」になるのかそれとも「負け組」になるのか、生き残りをかけた経営戦略として注目を浴びている。
体系的に学習 同アカデミーの設立には、11社が総聯、民団の所属を越え参加した。 受講対象者は11社全27店舗の新入社員から店長までの全社員約1200人。講座は全15あり、一般社員と管理者の2つの部門に分かれて人材を育成する。開講にあたっては5年前、大阪市内に開講された、在日コリアンが共同運営する「P&Mアカデミー」の協力を得た。 代表理事は、群馬県でパチンコ業を手広く営むペックコーポレーション代表取締役の白盛基さん(47、群馬朝鮮初中級学校教育会会長)。 「これからの時代がたとえ好転し、良い機械が発売されたとしても、売上高至上主義の会社は苦戦し、顧客第1の経営に転換した会社が優良店として勝ち残る。そのためには、会社全体の総合力を高めることが必要不可欠。アカデミーはそのノウハウを体系的に学ぶことを目的に設立した」 11月のある日の午前10時半、研修室に男女28人の受講生が集まった。「基本接客」講座を受講する新入社員たちだ。 講師は、社員教育のインストラクター歴15年のベテラン、茂手木伸夫・専任講師である。「心が変われば態度が変わる。態度が変われば行動が変わる」との言葉から講義が始まった。 用意された教材は、大阪の「アカデミー」で使用しているものを参考にしながら編さんしたもの。 この日は午前中、研修を受けるうえでの心構えについての講義を受け、午後は顧客が従業員に求めていることや、あいさつの仕方、声の出し方、接客用語などについて学んだ。 あいさつには、@灰皿の交換などを行う際の「失礼します」の15度A客を向かい入れる際の「いらっしゃいませ」の30度B感謝の意を込めた「ありがとうございます」の45度、の3つのパターンがある。 客の好感、満足を得るには、「まず相手を見て、言葉で気持ちを伝えてから、頭を下げる。首からではなく、腰からです」。 受講生らは熱心にメモを取っていたが、実習ではてこずる人も。だが、講師の手ほどきを受け、受講生たちは徐々に上達していく。 続いては、接客のポイントについて。 「客に対するサービス面での差別はいけないが、地域に根付いたホールを目指すためには、常連と新規の客に対する さりげない区別 は必要。これはマニュアルにはない、 心 で表現するものです」。授業は午後5時半まで行われた。 入社3ヵ月のA社の男性社員(19)は、「これまでの自分の接客態度について改めて考えさせられました。本当に有意義だった」と語っていた。(羅基哲記者) ◇ ◇ 15ある講座の1回の参加者数は平均約22人。講座は一般社員と管理者の両部門に分かれて行われる。 【一般社員の部】 まず、「基本接客」を受講する。その後分野別に講義を受けるが、「ホール」では機械の構造、「カウンター」ではクレームの処理、「事務」では電話の受け答えや作法など、社員としての接客や心構えについて習得する。 ホールの競争が激化するなか、社員らに社員として自覚を持たせることで、競合店との差別化、ファンの固定化を図るという狙いも込められている。 【管理者の部】 「班長」「主任」「店長」に分かれる。ここでは「『会社の核』を育成する」のが主眼だけに、マニュアルだけではなく、自分で問題点を見つけ解決することを強く求めている。 例えば、班長クラスになると、アルバイトやパートに対する育成プログラムを作成し、指導しなければならない。そのため講座の「班長」ではこれの指導方法を教えるとともに、その結果を報告書にまとめ、反省会も行う。 「店長」では、店舗の管理と市場の分析、その対応、またプリペイドカードの変造などの不正行為防止やイベントの企画、チラシ作成などを行う。 管理者の能力を向上させることで、一般社員との一体化を図ることができる。 【研究会とコンクール】 セキュリティと販売促進に関する2つの研究会、それに接客と改善提案に関するコンクールも開催される。 また、月1度の定例理事(各社の代表)会、人事育成担当者会議なども行い、情報交換も深めている。 |