そこが知りたいQ&A

朝鮮学校が週5日制になるの?

2003年度から第2、4土曜休校に
第1、3土曜は課外活動/11校で実験・研究


 Q 朝鮮学校が週五日制になると聞きましたが。

 A 2003年度からスタートしますが、完全な週5日制ではなく、第2、第4土曜日を休校にして、月2回の週5日制を実施する方向です。休校しない土曜日には、普通の授業の代わりに様々な課外活動を行う方針です。

 2001年度からすべての朝鮮学校が移行期間に入るのに先立ち、今年4月から全国11校(東京第1初中、東京中高、川崎初中、愛知中高、大阪第4初級、東大阪中級、大阪朝高、尼崎東初級、神戸初中、広島初中高、北九州初中)を指定実験校に定め、土曜日の活用法などを研究中です。

 Q なぜ週5日制を実施するのですか?

 A 日本学校(「1条校」)の動きと関連した措置です。「ゆとりの教育」を掲げる文部省の方針により、日本の学校(国公立と1部の私立)では1992年9月から月1回、95年4月からは月2回と、週5日制を段階的に導入しており、現在、第2、第4土曜が休校になっています。そして、新しい学習指導要領が実施される2002年度からは完全週5日制に移行します。

 Q 朝鮮学校が完全週5日制を実施しないで月2回にする理由は?

 A 現在、日本の多くの公共団体、企業は週休2日制です。文部省では、親子の触れ合いを図ることも目的の1つにして完全週5日制を目指しているのです。しかし、朝鮮学校生徒の家庭は自営業者などの割合が比較的高く、週休2日の生活をする保護者が相対的に少ないのが現状です。そこで検討の末、当面は月2回の週5日制とすることになりました。

 指定実験校のひとつ、東京第1初中が今年3月、全保護者を対象に行ったアンケート調査によると、回答のあった178世帯中、過半数の92世帯が月2回の休校が望ましいと回答しています。休校しない土曜日に課外活動を行うことには、「多彩な体験をさせてほしい」など、期待を寄せる声が多数でした。

 一方、現行通りの週6日制を望む家庭が51世帯、反対に完全週5日制希望も35世帯ありました。

 現行通りを望む理由としては、「もともと日本の学校より国家記念日などの休日が多い(朝鮮学校は朝・日両方の祭日が休み)」「勉強が遅れないか心配」「共働きだから土曜日に子どもを見てあげられない」などがあがっています。

 また反対に休みを増やす側の理由としては、「日本社会のすう勢に合わせるべきだ」「家族と共に過ごす時間が必要」「家から学校が遠く通学時間が長いので、子どもの体が疲れている」「地域の日本の子どもたちと触れ合える」などがあがっています。

 各指定実験校では保護者家庭の実情を調べ意見を収集したうえで、共働きの場合などは、休校の土曜日にも何らかの措置を講じるための対策についても検討しています。

 Q 指定実験校ではどのような活動を行っているのですか?

 A 毎月第2土曜日を試験日にし、課外活動の内容と方法を研究しています。コンピュータを利用した情報学習、映画・音楽・美術などの芸術鑑賞、各種の講演会、自由研究などの課外学習、各種の民族文化体験、水泳・スキー・スケートなどのスポーツ教室、日本学校に通う同胞生徒や日本人生徒との交流活動、総聯機関や公共・民間各種施設などへの社会見学・体験など、多彩な内容で行われています。

 各実験校で、とくに力を入れているのが人権教育です。広島初中高の高級部では10月、養護学校を訪れ交流を深めました。7月には平和教育の一環として市内の平和記念資料館を訪れています。東京第1初中でも、身体障害者の芸術家を招いたり、地域の高齢者施設で介護などの体験活動を行いました。

 広島初中高では「人権意識を高めるための教育は今後の重要な課題。まだ手探りだが、民族差別、非差別部落、障害者、高齢者など様々な人権問題に取り組んでいきたい」としています。

 Q 効果的な取り組みのためには、地域社会の協力が必要では。

 A 川崎初中では、在日本朝鮮人科学技術協会(科協)神奈川支部の協力で、子どもたちが楽しみながら科学知識を身につけるための体験学習を行ってきました。これまで建築の歴史、半導体やカラーコピーの原理など、幅広い分野を扱っています。インターネットを通じて専門家と児童生徒が対話する企画も行いました。

 才能を育てたいという科協のニーズと、多彩な体験学習の機会を設けたいという学校側のニーズがうまく一致したケースと言えるでしょう。地域の同胞書道家の協力で習字教室も開いています。

 同校では、このように同胞社会の協力を得るだけでなく、地域の日本社会でも児童生徒が様々な活動に参加できるよう、市当局とも話し合いを重ねています。

 土曜日に区などの地域レベルで子どもたち向けのイベントが開かれる場合、当該区内の日本学校には知らされます。しかし川崎初中の場合、児童生徒の居住地が各区にまたがっているため、地域ごとの情報を把握するのは困難です。そのため同校では、児童生徒の居住する各区の情報を市が一括して知らせてくれるよう求めています。

 同校では「子どもたちに体験させたい素材は同胞社会にだけでなく、日本社会にもたくさんある。今回の研究は、各校の裁量で教育内容を深められるという意味でとってもやりがいがある。子どもたちが興味を持って参加できる学習活動を今後も研究していきたい」としています。

 元来、朝鮮学校のカリキュラムは教科学習の授業が大きな比重を占めています。国語(朝鮮語)、日本語、英語の3ヵ国語を扱い、歴史、地理などの社会科目でも朝鮮、日本、世界について幅広く教えるため、科目数が多いからです。

 その点、多彩な体験学習を中心にした課外活動を第1、第3土曜に行うのは、民族教育をいっそう充実させるうえで大きな意義があります。各指定実験校でも、こうした意識を持って研究に取り組んでいます。

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